文芸
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第44回
ニッケイ新聞 2013年4月2日 「あんたが足を大開きにしているからぶつかったんだ。お互いさまだ。あやまるもんか、このチンピラアロハ」 やくざ風の男はチンピラと言われ、冷静さを完全になくしてしまった
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第42回
ニッケイ新聞 2013年3月28日 うずくまる学生の足のつま先を狙って盾を垂直に叩き付けた。数の上では圧倒的に学生の方が優勢だが、訓練を積んだ機動隊の前には学生はあまりにも無力だった。うずくまり、身
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第41回
ニッケイ新聞 2013年3月27日 彼らが学生運動に消極的なのは、自分たち自身の中にも挫折感が渦巻いていたからに他ならない。高校生三年生だった頃、東大安田講堂の攻防が展開され、全共闘運動と無縁でいた
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暮らしに役立つ情報誌=『楽々サンパウロ』刊行=日系書店で発売中
ニッケイ新聞 2013年3月27日 サンパウロでの暮らしに役立つ情報誌『楽々サンパウロ』(コジロー出版、228頁、70レアル)の2012—2013年度版が刊行された。 レストラン、ショッピング、娯
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第40回
ニッケイ新聞 2013年3月26日 「そうたい。勇作が泣きながら、わしらの家に助けを求めて走ってきよった。『おばちゃん、父ちゃんな助けてくれ』と、それは子供ながらもの凄い形相だった。飛んでいったが、そ
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第39回
ニッケイ新聞 2013年3月23日 「父ちゃん、もう起きんね。珍しいお客さんがきとっとよ」 「ああ、うるさか。どげんした」 「お客さんがきとっと」 声は筒抜けだった。 「昔はあんな親父ではなかったん
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第38回
ニッケイ新聞 2013年3月22日 「私の後をついてきて下さい。二十分もかかりません」 折原のトラックは長年乗っているのか、バンパーもなく、ボンネットはあちこちがさびついていた。おまけに運転席の窓も
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第37回
ニッケイ新聞 2013年3月21日 高崎は一瞬怪訝な表情を見せたが、すぐに温厚そうな会長の顔に戻った。 「折原の親父さんはまだ来ていないが、長男がどこかにいたな……」 会長は広い会場を見回した。相
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第36回
ニッケイ新聞 2013年3月20日 フスキンニャはアチバイアで高速道路を下りた。車は大きく楕円を描くインターチェンジから市内に向かって走り続けた。サンパウロに来てから取材先と言えば、在サンパウロ日本
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第35回
ニッケイ新聞 2013年3月19日 アントニオはサンバのテープを慣れた手つきでカセットデッキに差し込むと、ボリュームをいっぱいにしてかけた。安物のスピーカーのためか音が割れたが、それでもボリュームを