文芸
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第35回
ニッケイ新聞 2013年3月19日 アントニオはサンバのテープを慣れた手つきでカセットデッキに差し込むと、ボリュームをいっぱいにしてかけた。安物のスピーカーのためか音が割れたが、それでもボリュームを
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第34回
ニッケイ新聞 2013年3月16日 こんなやりとりをしたのもわずか一年前のことだった。例の事件があってから初めて会っているのだ。喘ぐような息遣いで佐織が聞いた。「お話ってなんでしょうか」 「もちろん
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第33回
ニッケイ新聞 2013年3月15日 その数日後、応募用紙をもらいに小宮は国際協力事業団本部に行った。応募用紙は窓口ですぐにもらうことができたが、小宮はそこで移民募集のポスターを見たのだ。係りの者が差
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第32回
ニッケイ新聞 2013年3月14日 小宮は単刀直入に訪問の理由を両親に告げた。 「何故、結婚を許してくれないのですか。私が被差別部落の出身だからですか。部落だと何故、いけないのですか」 小宮は冷静
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第31回
ニッケイ新聞 2013年3月12日 「それでどうする気なんだ」 「説得します」佐織が今にも泣き出しそうな顔で答えた。 「自信はあるのか」 「説得してみないとわかりません」 「説得できなかった時はどうす
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第30回
ニッケイ新聞 2013年3月9日 佐織の方も甘い言葉を期待していたわけでもなくそれで納得してくれた。二人で暮らすのが自然だと小宮も佐織もそう思えるようになったから結婚する。それだけのことだった。
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ピンドラーマ=3月号
ニッケイ新聞 2013年3月9日 コジロー出版社の情報誌『ピンドラーマ』3月号が発行された。 今月号の特集は「移民の肖像〜リオ州チングア在住の松本富美枝さん」「各国移民レポート 米国南部編」「ブラ
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第29回
ニッケイ新聞 2013年3月8日 部落出身であるという理由で結婚が破談になる事実を、小宮は最も身近なところで体験した。この事件以来、姉は見合いも恋愛もせずに、今も独身だ。そんな姉の姿を見ているので、
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第28回
ニッケイ新聞 2013年3月7日 しかし、それが幻想でしかないことを小宮は高校三年の時に思い知らされた。小宮には四歳年が離れた勝ち気な性格の姉真弓がいた。真弓の結婚は式直前に破談になったのだ。表向き
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第27回
ニッケイ新聞 2013年3月6日 何度も同じ経験をするうちに、用事があるとか、勉強、宿題というのは嘘で、引き離される原因は小宮の住む地区にあることが、子供ながらわかってくる。 そうした大人の陰湿さ