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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(242)

 ブラジルの国を守るりっぱな軍人に成長していたのだ。軍服に身をかためた息子の姿は、サントアンドレの多くの若者が義務兵役で入隊する予備役軍人285射撃部隊の制服姿の者と、くらべものにならないと内心思った。息子はその辺の同年輩の青年たちよりずっと上の立場にいる。  「彼らはおまえに敬礼しなくてはならないのか?」  「そうです」  と ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(241)

 これが弁護士の弁明だった。  保久原正輝の主張で最も注目され、評価されたのはアララクァーラでは一度もテロ行為がなされなかった事実だ。  臣道聯盟の会員はみな働き者で、性穏和で、農業、商業などの分野に従事し、前科は全くなく、彼と同じようにみなブラジル国籍の子弟がある。ブラジル発展のため尽くす国民なのだ。サボタージュやテロ行為を行 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(240)

 正輝は1954年12月3日、書類に署名し、弁護士の事務所の隣のプラッサ・ダ・セー291番地のサンパウロ第5登記所に登録した。  正輝のの尋問書にはこう書かれている。 「これまでの調査で指摘された証拠について尋問されたとき、証拠は正しくなく、証言人も知らず、それ以外申し立てることはないと答えた。訴訟の時期、アララクァーラの臣道聯 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(239)

 それから1年も経った1954年10月30日、アララクァーラ住民の尋問が再開された。高林明雄の番だった。高林延太郎、ヌイの息子で、静岡県出身、44歳、商業を営み、居住地はサンベント街1151番地。  弁護士がいなかったので、判事はアントニオ・ジロバニーニ氏を弁護に当たらせた。臣道聯盟の会員ではあったが、組織の支部をつくる考えなど ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(238)

 藤森坂松は1953年2月27日、第一地区裁判所の長官がシーセロ・トレード・ピザのとき、尋問を受けた。山口県出身の藤森は当時、62歳だった。両親は藤森初次郎、藤森キミで、ずっとアララクアァーラに住み、農業をつづけていた。弁護にはジョン・ベルナデス・シルバが当たった。  また同日に、しみろが同じ判事に尋問を受けた。熊本県出身で59 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(237)

 総領事館に経済的援助を申しでたり、暴力沙汰を起こすものもでた。多くの会員が日本からきたとき泊った移民収容所に収容された。そして、1年少しで解散した。  その出来事は正輝に自分がいまだに裁判の判決を受けていないことを思いださせた。子どもたちの出生届を役所に提出したことで国外追放から完全に解放されたと考えていたが、その後どうなって ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(236)

 日本人から「桜組」と呼ばれたこのグループはすぐ見分けられた。カーキ色の制服を着、同じ色の軍帽を被って、グループをくんで歩くからだ。彼らの目的は「日本に引き上げる」ことだから、敵国から日本に帰るという意味で「引き上げ論者」ともよばれた。  規則正しい彼らは、短期間のうちに町に住む同胞たちの協賛を得るようになった。まずはじめに参加 ...

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森で光る菌を先住民と見よう=アマゾン研究所の石川さんが絵本=4言語「ひかるもり」刊行

 日英ポルトガル語の3カ国語と先住民のニェエンガトゥ語による絵本『ひかるもり』(全64頁)が、昨年11月に刊行された。出版記念のイベントで2月25日~3月7日まで訪日していた、アマゾナス州都マナウスの国立アマゾン研究所(INPA)で研究員として勤める石川カズエ・ノエミアさん(47、三世)は、本紙の電話取材に応えた。  この絵本は ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(234)

 しかし、正輝にとっては意味がある。これまでの生活を打切り、新しい生活を踏みだす機会になるような気がした。  正輝には未だに実感がなかった。8年か10年ほどまえ、それまでの習慣を打ち切った。子どもたちがブラジル社会に溶けこむために、家での日本語の会話を辞めさせ、よりよい教育環境をもとめて、アララクァーラより大きい都市の郊外に移る ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(233)

 たしかに、近づいてくる人たちのなかに、見違えるほど整った服装のネナがいた。だから、ツーコはネナだと気づかなかったのだ。三人は懐かしさのあまりネナのほうに走った。ネナはきれいに着飾り、パーマまでかけていた。両親に合わせようとわざわざ連れてきてくれたのだ。  ツーコはこんなにおしゃべりなネナを見たことがない。姉は話しつづけた。   ...

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