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文芸

人文研=10年ぶりに紀要を発刊=高知移民、満州引揚者ら考察

 サンパウロ人文科学研究所(本山省三理事長)は、10年ぶりとなる紀要第8号『人文研』(178頁)を昨年11月に発行した。人文研関係者や公募により寄せられた論文・研究ノートが掲載されている。若手研究員らが調査成果を定期的に発表していくことの重要性を訴え、再刊行の運びとなった。  内容は次の通り。▽寄稿論文「人文研前史―サンパウロ人 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(225)

 缶の穴のところに瓶を水平に突っ込む。もう一本は縦にして、缶の真ん中に入れ、はじめの瓶にもたせかける。片手で瓶が動かないようにし、もう一方の手で、おがくずを入れ、かたまるまで上から押す。そのあと、おがくずがくずれないようそっとビンを取り出す。すると、L型のトンネルができる。  しわくちゃにした新聞紙でおがくずに火をつける。このと ...

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モジ入植100年史を刊行=サイトから無料でDL可

 コクエラ農業者協会とモジ・ダス・クルーゼス文化協会が、昨年9月15日に「モジ入植100周年式典」をサンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市のコクエラ農業者協会会館で盛大に開催した。記念事業の一環として昨年末、100年史『100 Anos da Imigracao Japonesa em Mogi das Cruzes』が発刊された ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(224)

 左側の廊下の先の寝室はニーチャン、アキミツ、セーキ、ミーチの4人の男子たちに与えられた。一方のダブルベッドには上の二人、もう一方は下の二人が使った。居間の右側の小さい部屋にはシングルベッドにネナとツーコが二人逆さまに寝るようにした。奥の大きな寝室にはダブルベッドとシングルベッドをくっつけて、正輝夫婦といちばん下のヨシコとジュン ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(223)

 そのころ、「家」という言葉は屋根と壁でできた住まいを指していた。人によっては正輝一家の住んでいるところをみて、「家」とはいわなかったかもしれない。確かに前の掘っ立て小屋より多少ましだったが…だが、マッシャードス区とドン・ペドロ・プリメイロ街の2軒にくらべると、雲泥の差があるのだ。  家の前面の壁は左側からみていくと、まず、白く ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(222)

 サンパウロから売り物を運んでくるためと、朝市が立つ場所に屋台を運んでいくためにトラックが必要だ。月曜日はヴィラ・アルピーナスのIAPI、火曜日は家の近くで、ドナ・ゲルトゥルデス街の角から始まるアビーリオ・ソアレス街、水曜日はサンタ・テレジーニァ、木曜日はジャルジン区のフィゲイラス街、金曜日は中心地のジェネラル・グリセーリオ街、 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(221)

 ほかの業者より苦しいことを察し福知は、ニンニク1箱の原価だけを受け取った。ニンニクの箱は底が六角形の角柱という変わった形で、板一枚はずせば中味がとりだせる。ニンニクは白い皮に包まれているので、そのままでは見かけが悪い。桃色の皮が出てくるまで白い皮をむくと、客の目を引いた。正輝はニンニク玉を四つか五つのひと山にした。ひと山には大 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(220)

 とくに、日本の敗戦を認めた正輝がブラジルに根を下ろそうと決意し、子どもたちの教育のため都会に移ったことに心を打たれた。ネーヴェス氏は子どもたちが真のブラジル人になるためには、どんな援助も惜しまないことを約束したほどだ。  マサユキを、洗濯業よりずっとすぐれた職につけるようにしてくれたのは、ほかでもないこのネーヴェス氏だった。ま ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(219)

 収入はあるのだが、店の家賃やその他の経費が高かったのだ。いつも経理にうとい正輝だが、今回は採算が合わないと、正しい判断を下したのだ。たとえ収入が減っても、今の仕事より経費がずっと安い仕事に商売変えをしなくてはならない。  家族にとって黒字になるのが望ましい。少なくとも経費を差し引いても、家族の生活費が残るような仕事がいい。朝市 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(218)

 庭は家族以外の者にも使われているので、房子は麻袋を縫い合わせ庭に面した入り口や小さな窓のカーテンにし、外からみえないようにした。しかたのない対策だが、正輝は小屋が気に入らなかった。できあがった小屋は全く酷いものだった。もし、外を通る人がみたら、貧民窟の掘っ立て小屋のように思っただろう。こんな小屋はサントアンドレでもあまりみかけ ...

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