文芸

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(67)

    「先程の質問にたいしては、資料がなくて答えられない。しかし増産態勢にあることは確実である。明日要求にあった鉛筆とノートを用意する」  上級将校は鮮やかな日本語で説明し、私に向かって微笑して去った。翌日

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(66)

     福岡県の炭鉱で働いていたことなど問わず語りに分かり、だが何故降格されたのか、佐世保で別れるまで打ち明けなかった。  復員後二年近く文通し、以前の炭鉱で働いていると小まめに身辺を知らせてくれていたが、

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(65)

     どのくらい貨車に揺られていただろうか。大きな駅に着き貨車から降りた。元山である。また一歩日本が近くになった。元山まで来ていることは、確かに帰還することに間違いないはずだが、一度思いきりよく騙されてい

  • 同書の装丁

    『ブラジルの日系人』第4版=出版会30日、優秀論文発表も

     移民二世の視点が中心となって描かれた移民史『O Nikkei no Brasil(ブラジルの日系人)』の第4版の出版記念会が、30日午後7時から、文協貴賓室(R. Sao Joaquim, 381)

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(64)

     すきっ腹をかかえ寝ころんだ。寒風が吹き込まないから、扉なしのセメント床の上でも寒さを感じない。  後側の板囲いの上部の空間を眺めた。急傾斜の小山に木の十字架の墓標が、ビッシリ立っている。ソ連は無宗教

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(63)

     こんなやり方は初年兵の一人が、在郷軍人から教えられたものらしい。初めての入浴日、私は悠々と湯につかり、あがって石鹸で体中の垢を落とした。再び湯につかろうと浴槽に入った。古年兵らしい二人が浴槽にいるだ

  • 高安さん、宮城さん、峰井さん

    沖縄県人移民塾=『群星』第4号刊行、合評会27日=壮絶な戦争孤児体験も掲載

     ブラジル沖縄県人移民研究塾(宮城あきら塾長)が発行する同人誌『群星』第4巻が8月に発行された。日ポ両語。本紙編集部やブラジル沖縄県人会本部にて無料配布中。  今号では、ブラジル沖縄県人移民110周年

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(62)

      一六、列車は南下する  ソ連側は行き先を発表しないが、刻一刻と日本が近くになっていることは確かな事実であった。  翌早朝列車は動き出した。昼頃荒野原の真ん中に停車した。前方車輌から 「後へ逓伝。各

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(61)

     あっけにとられている私を引張って、大きな切り株の陰に行く。大き目の空き缶に高粱をざっと入れ、水筒から水を注いだ。石を積んだカマドに枯れ枝を重ね、マッチで火をつけて、缶を載せた。  マッチなど、ラーゲ

  • 自分史=私のシベリア抑留記=谷口 範之=(60)

     そのおっとりした感じが、今も残っている。 「甲種か乙種か」   と、訊ねると 「甲種だった。海拉尓の経理学校へ入学することになった。谷口はどちらだ」  現金なもので、同年で同年兵だと分かると、先輩後

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