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文芸

どこから来たの=大門千夏=(24)

 胸がドキドキ。  遠巻きにそっと鍋から離れると、あとは、後ろも見ないで洗面所に駆け込んだ。気持ち悪く吐き気までする。あのしわしわの手がおっかけてくるようで、しっかりと鍵をかけて鍋を触った手をごしごし洗った。  ブラジルの人はこんな恐ろしいものを平気で食べるのかしら。  あの日あんなに奇声を上げたのに一〇年後には私が鶏の足を煮て ...

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どこから来たの=大門千夏=(23)

「あんた達はみんなうちのお客さんよ。ちゃんと払ったんだもの、すごい事だね」と言うと、頬を緩め穏やかな目をして「チアありがとう」とお礼まで言ってくれた。  どこにでもいるごく普通の男の子達なのだ。思わず昔、祖母が「良い子だねえ」と言ってしてくれたように頭を撫でてあげたい衝動にかられた。  何かの理由で家を飛び出してきた子供達。きっ ...

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どこから来たの=大門千夏=(22)

「テニスがいるんだ」顎をしゃくっていきなり言った。自分たちの要求を聞くのは当たり前と言った横柄な態度。 「ここはバザーだから何時でも売りますよ。一足二レアル」鉄格子の内側から大声で怒鳴った。よく見ると意外と小奇麗なTシャツを着て、半ズボンにゴムぞうり姿。しかし顔や手足は汚れていて何日も洗っていないようだ。 「金はない」威張って鉄 ...

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どこから来たの=大門千夏=(20)

 それを見た友人は「ブラジルでは食べ物を持って帰ることは恥です。貴女のしたことは恥ずかしい事ですよ」ときっぱりと言いはなち、その上「ブラジルでは食べ物を持って帰るなんて習慣はありません。あなたのしたことは大恥です」と再度言われて恐れ入ってしまった。  食べ物を持って帰ることがそんなに恥ずかしい事なのだろうか。目の前に残したものは ...

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どこから来たの=大門千夏=(20)

 障子に朝の柔らかい黄色い光が、冬は雪の白い光、雨の日は灰色のどんよりした光が当たっている。それをぼんやり見ている内に段々目が覚めてくる。――と、急に「朝がきた!」と嬉しくなる。すぐに腹ばいになって枕の向こうの皿の上を見る。手を布団からそっと出して皿の上のお菓子をつかむと、それを布団の中でごそごそと食べる。  食べ終わると機嫌よ ...

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どこから来たの=大門千夏=(19)

「アア、中々よく似合うわ」自分の作った「世界に一つの首飾り」に満足する。  夜になった。シャワーを浴びようとして、首飾りが外れない、先生に留めてもらったので外し方が判らない。安物だから簡単なはずなのに、どうしても外れない。近年指先の神経がバカになって、指紋が薄くなって、細かい仕事がまるっきりできなくなった。昔なら簡単に外せたのに ...

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ピンドラーマ=1月号

 孤児ロー出版のブラジル情報誌「ピンドラーマ」1月号が出版された。  「移民の肖像」では「女剣劇旅役者」の丹下セツ子さんの経歴、「生まれ変わっても芸人になりたい」という熱い想いを取材。  そのほか、好評連載中の「ブラジル版百人一語」「白洲太郎のカメロー万歳」「クラッキ列伝」など、恒例のグルメ、イベント、求人情報を掲載。  日系書 ...

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どこから来たの=大門千夏=(18)

 理由は、これから私が八〇歳になったら、することが無くなるだろうから、日がな一日椅子に座って、首飾りを作ろうという目的と言うか希望を持っているからだ。  その日のためにあちこちでビーズを集めてきた。  インドネシア、ミャンマーの発掘品のビーズ、チベットなど少数民族のビーズ、ベネチアのビーズ、ウランをガラスに混ぜて発色させたビーズ ...

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どこから来たの=大門千夏=(18)

 理由は、これから私が八〇歳になったら、することが無くなるだろうから、日がな一日椅子に座って、首飾りを作ろうという目的と言うか希望を持っているからだ。  その日のためにあちこちでビーズを集めてきた。  インドネシア、ミャンマーの発掘品のビーズ、チベットなど少数民族のビーズ、ベネチアのビーズ、ウランをガラスに混ぜて発色させたビーズ ...

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どこから来たの=大門千夏=(17)

 それから何だかステービスの様子がおかしかった。私のアンチーク・ジュエリーの直しも暇がかかることが多くなった。度々いないことがあった。  ある日、息子が「父は肺がんにかかった」と教えてくれた。 「絶対あの植木があなたにエネルギーをあげていたのに。私が持って帰ったからあなたが病気になった。あの植木は返すから…あの植木は返すから…ご ...

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