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文芸

『抵抗と創造の森アマゾン』=民衆運動を新たな開発政策の糸口に

本書の装丁

 『抵抗と創造の森アマゾン 持続的な開発と民衆の運動』(小池洋一、田村梨花共編、現代企画室)が、昨年11月に日本で刊行された。  本書は、アマゾン熱帯雨林で進行する深刻な森林破壊の現実と、それに抵抗し、社会経済の新たな在り方を展望し創造的活動を展開する民衆の動きに焦点を当て、消費主義に替わり得る持続的開発の在り方を展望した労作だ ...

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どこから来たの=大門千夏=(16)

 彼の細工場は街の中央の古いビルの中にある。このビルに入ると大理石を敷き詰めた丸いホールがあって、正面の壁には細かいタイル細工でコーヒー園の様子が描かれている。よく見ると右下にかの有名なニーマイヤのサインがしてある。  天井は高く、壁、ドアの飾りつけは銅版が使われて、いつも掃除婦がピカピカに磨きあげている。ブラジルの良き時代、コ ...

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どこから来たの=大門千夏=(15)

 その上、作品をじっと見ていると、自分があの石器時代に紛れ込んだような錯覚まで起こす。  不器用な私も、みなと同じように石を削ったに違いない。しかし根気のない私はすぐに投げ出してしまった事だろう。そんな途中で投げ出した不出来な発掘品も今、手元にいくつかある。これぞ本当に前世の私の作ったものに違いない、と思うと、これまた愛着が湧く ...

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どこから来たの=大門千夏=(14)

 小さい時から私は発掘品が好きで、若いころは考古学者になろうとしたことがあったが、ある時、発掘現場で多くの学生が、炎天下にしゃがみ込んでハケを一本もって土を払いのけている作業を見て、即、その気を失くしてしまった。 ――考古学者になるよりコレクターになったほうが楽だわい、と気楽な道を選んだから努力の結晶 で得た発掘品は一つもなく、 ...

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どこから来たの=大門千夏=(13)

 いつだったかバンコックの街で、切った街路樹の枝を、象が軽々と鼻で束ねてくるくると巻きあげ、上手に背中に乗せ、次々と積みあげている光景を見たことがある。瞬くうちに積み終えると何処かにゆったりのっそりと遠のいていった。  あの象一頭の方がずっと早く正確で、木と機械より、木と象のほうが人間の生活にぴったり調和しているのを見て、なぜか ...

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グァタパラ文協=移住地50年史「流芳」刊行=日ポ両語、移住地の歴史振返る

案内のため来社した新田さん、茂木会長、脇山編纂委員長

 グァタパラ農事文化体育協会(茂木常男会長)は、2012年に迎えた移住50周年を記念して、「流芳 グァタパラ移住地50年史」を刊行した。日ポ両語。全201頁。  記念誌には昭和36年11月に全国拓殖農業協同組合連合会が出した「グァタパラ移植民事業計画概要」の要約が掲載されているほか、第1章「グァタパラ移住地50年の歩み」では移住 ...

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どこから来たの=大門千夏=(12)

 すごいケチなんだ! もう絶対頼まないぞ。でも笑顔だけは作って挨拶し、家に帰った。  一時間くらいして台所で夕食の支度をしていると、おや雨だろうか、外からさわさわと音がしてきた。…その内、ざわざわの音に変った。窓から首を出してみると塀の向こうで男が前かがみになって何かを引っ張って歩いているようだ。何をしているんだろう?  しばら ...

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どこから来たの=大門千夏=(11)

 老婦人と別れて歩き出した私は、沈んだ一人息子の話をサバサバと語ってくれた事がとても心に引っかかった。  息子に死なれて、あれから何年たっているのだろうか。一〇年たって子供をもらったという。その子が今、三〇歳になった。それでは四〇年経つのだろうか。  一人息子を亡くしたことは、夫を亡くした私よりずっとずっと悲しみが大きかったに違 ...

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ピンドラーマ=12月号

 コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』12月号が発刊された。  「ブラジル社会レポート」では、ブラジルの出生登録数減について紹介。出生登録数が前年の水準を下回るのは2010年以降初めてで、専門家はジカ熱と不況の影響を理由に挙げている。  好評連載中の「ブラジル版百人一語」「白洲太郎のカメロー万歳」「クラッキ列伝」ほか、 ...

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どこから来たの=大門千夏=(10)

 相変わらず馬鹿正直でうんざりすることは度々あったが結婚生活は平穏に続いた。  いくら金儲けが上手でもケチでお金に汚い男ではどうにもならない。これでいいんだ。私の分相応な夫なのだと自分を慰め慰めてのあっという間の二五年、幸いなるかな最後まで「保険」を受け取るチャンスはなかった。(二〇〇九年) サバサバと話せる日  サンジョアキン ...

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