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文芸

道のない道=村上尚子=(68)

 女中は、じゅん(卓二の息子)の学校行きの支度をすることが条件で、三月二十五日に雇ったもの。初めのうちは、九時半頃までに来て、一応間に合う女中であったが、日が経つにつれ、だんだん遅く来るようになり、最近半月程は、十二時頃、のこのこやって来る。  それでは、じゅんの学校に間に合わないので、私が昼飯を作って間に合うようにした。女中は ...

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道のない道=村上尚子=(67)

 私の会社の話に戻る。定刻に出勤しているのに、すでに仲間たちは来ていて、社内の掃除をしている。「そうか、言われなくても早めに出て来て、掃除をするのだな……」      日本ではこうするのか。次の日から、みなと同じように早めに来て、掃除をした。誰も言ってくれなかったので、私ひとりが、横着者になるところであった。  それからしばらく ...

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道のない道=村上尚子=(66)

 話が途切れると、照れくさい! その時は自分にある癖を皆出した。耳を引っ張ったり、腕を振ってみたりした。すると、向こうの方から、少し胸を開いてきて、 「何か用かね?」と、優しく尋ねてくれた。それからやっと用件を切り出した……  このやり方で結果が出はじめた。私自身が、お百姓さんたちへ懐(なつ)いているのに気がついていた。田舎の人 ...

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道のない道=村上尚子=(65)

 無口な友行には、こんな仕事は向かないのでは? と思うのだが、そこそこに契約を採って来ている。一度付いて行って、彼の仕事振りを眺めていたが、 かえってあの無口と誠実さで、話している声は理論的で優しく説明をしている。それが受けているのだと思えた。私には、こんな難しいことは無理だし、何の手伝いも出来ない。  そこで、ある大きな会社( ...

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道のない道=村上尚子=(64)

 どうやら、この寺の家族は、私を友行の嫁として、受け止めているらしい……困ったことになった。  寺では、父親が亡くなり、弟が継いでいて、かわいらしい息子と嫁もいる。母親は、一応この寺では、私の義母ということになったので、私は彼女を「お母さん」と呼んだ。痩せた小柄な人で、温かみのある人だ。彼女とは馬が合うようだ。  お母さんは、寺 ...

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ピンドラーマ1月号

 コジロー出版社のブラジル情報誌『ピンドラーマ』1月号が発刊された。  シャぺコエンセの悲劇、各国移民レポート・チリ編、ブラジル面白ニュース「40年ぶりに人前でのキスが許される?!」、ほか恒例のグルメ、イベント情報を掲載。  日系書店、日本食店などで配布中。問い合わせは同出版社(11・3277・4121)まで。

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道のない道=村上尚子=(63)

 二人とも反対はせず、言葉が少なかった。母は、私の見送りのため、バスの停留所までついて来た。あの赤い土埃を巻き上げる田舎道で待っていると、バスはやがてやって来た。私は、バスに乗り込んで、発車し始めると、後の席に移動した。手を振るためである。  ところが、あの痩せた小さな母は、道の真ん中にしゃがみ込むと、うつむいた。何となく草をむ ...

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道のない道=村上尚子=(62)

 そのうち生活は、いよいよ貧しくなり、水代も惜しくなってきた。私はあの食堂の資金を貸したA子を思い出した。今はバイア州で成功しているという噂を聞いている。「借金を返してほしい」と伝えてみた。彼女なら、すぐに返済してくれるはずだと、軽く考えていた。ところが、 「そんな人だとは、知らなかった!」  と、大層恨んでいるとのこと。私には ...

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道のない道=村上尚子=(61)

 実のところ「ふるさと」が好転しだした時、T子の鼻息が荒くなった。ここは客足も良くなっている。いける! と彼女は思ったのか。 「今に尚ちゃんを追い出して、ここで寿司屋を開けるわよ!」  と常々周りの者に打ち明けていたという。新聞に私の記事が載ると、それを更に利用する者が出て来た。  例えば、パラナ州から立派な体格で、温厚そうな男 ...

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『世界が称賛する国際派日本人』=伊勢さん新著、100冊限定販売

『世界が称賛する国際派日本人』

 毎週土曜付けで好評連載中のメルマガ『国際派日本人養成講座』の著者、伊勢雅臣さんの新刊『世界が称賛する国際派日本人』(育鵬社)が昨年10月に日本で刊行された。今作では前著で示した日本独自の歴史や文化がどのような人間を生み出したのかを、明治から現代までの人物を中心に全17編で紹介する。編集部ではさっそく100部を取り寄せた。遠隔地 ...

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