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移民差別法令集を刊行=発刊記念会10日

 移民政策のなかで差別を受けてきた日本人移民。ブラジル帝国開始以来、大量の法律の中から差別、区別にあたる16法令を集めたポ語の労作『コジーゴ・アマレーロ(日本人移民関連法令集)』の発刊記念会が、10日午後7時から、文協内移民史料館(Rua São Joaquim, 381, 9º andar)で行われる。  サンパウロ市在住の弁 ...

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道のない道=村上尚子=(30)

 この時が一郎のかきいれどきとなる。よろい戸を下ろすのは、亡くなった者と縁者への敬意の形らしい。  埋葬が済むと、数十人の人たちが、どっと入って来た。殆どの者がピンガをあおるためだ。一郎は慣れたもので、この客達の対応をこなす。体中、活気に満ちている。  この店にいた間に四回ほど、そんなことがあった。後は、何の変哲もないバールであ ...

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道のない道=村上尚子=(29)

 家計の財布は一郎が握っていて、それに何の不満もなかった。年中現金の顔はあまり見ない世界にいたので、家計を任されようが、そうでなかろうが気にもならない。  一週間もした頃、一応家の中のことは慣れたので、改まってバールを覗いた。二、三人の客が、ピンガを飲んでいる。陳列ケースの中には、ぱっとしない「サルガード(前菜)」が並べてある。 ...

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道のない道=村上尚子=(28)

「あの靴の中の足先には指がないとは、どういう形をしているのだろう……」  緊張しながら盗み見た。 「両足に指がないくらい、人間がまともなら関係ないじゃない」と自分に言い聞かせてもいた。    結婚式は、イビウーナの町で行なわれた。私たちの知らない人間ばかりが、五十名くらい参加しているのは意外だった。こちらは、私たち家族のみ六名で ...

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道のない道=村上尚子=(27)

 パトロンは、よく太っていて、後の壁と粗末なテーブルの間に、どっしりはまり込んだ。色白の短い首に、大きな頭が乗っている。  その彼は、見かけと違って、テキパキしたボリュームのある声で話し始めた。大きな目玉に、ぐいっ! と力が入った。 「尚子さんに、再婚の話をもってきました」と言う。  相手は、山本一郎といって、イビウーナの町でバ ...

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道のない道=村上尚子=(26)

 蛇は、ひろ子から私へ目を移した。こちらも睨み返した。蛇は、この無謀な私に気圧されたのか、闘争力を失った。そして池のほうへ体を延ばして、うねうねと逃げて行った。どうして私に、そんな勇気があったのか、分からない。夢中であった。  我にかえった私は、何気なく後ろを振り返った。たまたま、あの背の高い、よく日焼けした顔の青年が通りかかっ ...

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ニッケイ歌壇(524)=上妻博彦 選

サンパウロ  遠藤勇

夕暮れて雨音激し雷しきり待ちいし豪雨爽快に降る
雨上がり初夏の朝風心地良し両手差し上げ深く息する
夏の陽は強い光を地に注ぐ成長の夏躍動の夏
紺碧の大空翔ける大型機額から抜けた絵のように行く
夏雲は白く大きな造形美陽光浴びて輝いており

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ニッケイ俳壇(912)=星野瞳 選

アリアンサ  新津稚鴎

信濃村のポルトガル人煙草干す
鳩車に似て葦舟や湖は春
アリアンサの鳳梨も供え念腹忌
睦みつつ濁流越えて行きし蝶
富士の絵の額の後に守宮棲む

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『西風』第4号を刊行=ソ連侵攻やサンファン体験も

表紙

 西風会は『西風(せいふう)』第4号(158頁)を9月に刊行した。毎月1回集まって議論をする私的な研究会で、体験談や調査内容を半年に一度ほど出版しており、今回4冊目になった。  「『お守り』―新京の遠い空―」(古庄雄二郎)では、9歳のときに満州で終戦を迎えた古庄さんの体験談が語られている。突然のソ連対日参戦で、ソ連軍が怒涛の勢い ...

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道のない道=村上尚子=(25)

 ブラジルに景気が出てくると『クルゼイロ』、パラグアイなら『グアラニー』というお金を、商人たちは欲しがる。この町からブラジルへ、移民たちは脱出することになる。彼らは、所帯道具を担いで逃げて行く。  するとパラグアイの兵隊は、見ぬふりをしてブラジル側の兵隊へ通報しておく。その家族が汽車に乗って、ブラジルの領土に入ったとたん、密入国 ...

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