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どこから来たの=大門千夏

どこから来たの=大門千夏=(22)

「テニスがいるんだ」顎をしゃくっていきなり言った。自分たちの要求を聞くのは当たり前と言った横柄な態度。 「ここはバザーだから何時でも売りますよ。一足二レアル」鉄格子の内側から大声で怒鳴った。よく見ると意外と小奇麗なTシャツを着て、半ズボンにゴムぞうり姿。しかし顔や手足は汚れていて何日も洗っていないようだ。 「金はない」威張って鉄 ...

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どこから来たの=大門千夏=(20)

 それを見た友人は「ブラジルでは食べ物を持って帰ることは恥です。貴女のしたことは恥ずかしい事ですよ」ときっぱりと言いはなち、その上「ブラジルでは食べ物を持って帰るなんて習慣はありません。あなたのしたことは大恥です」と再度言われて恐れ入ってしまった。  食べ物を持って帰ることがそんなに恥ずかしい事なのだろうか。目の前に残したものは ...

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どこから来たの=大門千夏=(20)

 障子に朝の柔らかい黄色い光が、冬は雪の白い光、雨の日は灰色のどんよりした光が当たっている。それをぼんやり見ている内に段々目が覚めてくる。――と、急に「朝がきた!」と嬉しくなる。すぐに腹ばいになって枕の向こうの皿の上を見る。手を布団からそっと出して皿の上のお菓子をつかむと、それを布団の中でごそごそと食べる。  食べ終わると機嫌よ ...

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どこから来たの=大門千夏=(19)

「アア、中々よく似合うわ」自分の作った「世界に一つの首飾り」に満足する。  夜になった。シャワーを浴びようとして、首飾りが外れない、先生に留めてもらったので外し方が判らない。安物だから簡単なはずなのに、どうしても外れない。近年指先の神経がバカになって、指紋が薄くなって、細かい仕事がまるっきりできなくなった。昔なら簡単に外せたのに ...

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どこから来たの=大門千夏=(18)

 理由は、これから私が八〇歳になったら、することが無くなるだろうから、日がな一日椅子に座って、首飾りを作ろうという目的と言うか希望を持っているからだ。  その日のためにあちこちでビーズを集めてきた。  インドネシア、ミャンマーの発掘品のビーズ、チベットなど少数民族のビーズ、ベネチアのビーズ、ウランをガラスに混ぜて発色させたビーズ ...

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どこから来たの=大門千夏=(18)

 理由は、これから私が八〇歳になったら、することが無くなるだろうから、日がな一日椅子に座って、首飾りを作ろうという目的と言うか希望を持っているからだ。  その日のためにあちこちでビーズを集めてきた。  インドネシア、ミャンマーの発掘品のビーズ、チベットなど少数民族のビーズ、ベネチアのビーズ、ウランをガラスに混ぜて発色させたビーズ ...

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どこから来たの=大門千夏=(17)

 それから何だかステービスの様子がおかしかった。私のアンチーク・ジュエリーの直しも暇がかかることが多くなった。度々いないことがあった。  ある日、息子が「父は肺がんにかかった」と教えてくれた。 「絶対あの植木があなたにエネルギーをあげていたのに。私が持って帰ったからあなたが病気になった。あの植木は返すから…あの植木は返すから…ご ...

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どこから来たの=大門千夏=(16)

 彼の細工場は街の中央の古いビルの中にある。このビルに入ると大理石を敷き詰めた丸いホールがあって、正面の壁には細かいタイル細工でコーヒー園の様子が描かれている。よく見ると右下にかの有名なニーマイヤのサインがしてある。  天井は高く、壁、ドアの飾りつけは銅版が使われて、いつも掃除婦がピカピカに磨きあげている。ブラジルの良き時代、コ ...

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どこから来たの=大門千夏=(15)

 その上、作品をじっと見ていると、自分があの石器時代に紛れ込んだような錯覚まで起こす。  不器用な私も、みなと同じように石を削ったに違いない。しかし根気のない私はすぐに投げ出してしまった事だろう。そんな途中で投げ出した不出来な発掘品も今、手元にいくつかある。これぞ本当に前世の私の作ったものに違いない、と思うと、これまた愛着が湧く ...

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どこから来たの=大門千夏=(14)

 小さい時から私は発掘品が好きで、若いころは考古学者になろうとしたことがあったが、ある時、発掘現場で多くの学生が、炎天下にしゃがみ込んでハケを一本もって土を払いのけている作業を見て、即、その気を失くしてしまった。 ――考古学者になるよりコレクターになったほうが楽だわい、と気楽な道を選んだから努力の結晶 で得た発掘品は一つもなく、 ...

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