中島宏著『クリスト・レイ』
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中島宏著『クリスト・レイ』第51話
貧しい日本からの移民たちが、その限られた収入の中から、お金を出し合って建てたものである以上、それが一種変わった形のものであったとしても、そこには何の不思議もなかった。 たとえその教会が粗末なもので
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中島宏著『クリスト・レイ』第50話
もっとも、マルコス自身はまだ、そこまでのことには気付いていない。いや、薄々感じてはいるのだが、しかし、それに対する確信は持っていない。もし、アヤが存在していなければ、おそらく、そこに展開する風景はそ
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中島宏著『クリスト・レイ』第49話
神父さんたちの場合は当然、日本語が直接キリスト教という宗教の問題に結びついているけど、そういうことを抜きにしても結局、日本語を勉強するということは、異国に移民して来た人たちから次の世代へ繋いで行くた
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中島宏著『クリスト・レイ』第48話
「ところでね、アヤ、あなたは将来、どういう道に進もうと考えていますか。さっきの話ではどうも修道女にはならないようだけど、でも結局、さっきの『隠れキリシタン』に繋がる仕事をすることになっていくのだろうね
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中島宏著『クリスト・レイ』第47話
「あら、マルコスはいつもはっきりと自分の意見を言うわりには、変なところで遠慮するのね。先生という存在を、私から消してしまえばいいのじゃないかしら。そこに残るものは、ただの、大したことのない普通の女です
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中島宏著『クリスト・レイ』第46話
あら、これはちょっと、説明が長すぎたかしら。とにかく、そういう事情で、こちらで私は日本語学校の先生をしてますけど、それは別に、教会から命令を受けてやっているのではないの。ちゃんと、それなりの報酬を頂
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中島宏著『クリスト・レイ』第45話
「ハハハ、、、それではまるで私がスパイか何かのようね。いいえ、残念ながらそのような者ではありません。隠れキリシタンについて詳しいのは、別に私だけでなく、私が生まれ育った今村では誰もが知っていることで、
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中島宏著『クリスト・レイ』第44話
だから、このプロミッソンのゴンザーガ地区には、いつの間にかそういう人たちが増えていって、今では八百人ほどの日本人や日系人がここに住んでいるわ。 もちろん、それは福岡県だけでなく、熊本県とか長崎県か
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中島宏著『クリスト・レイ』第43話
そういうものが芯のところにあるから、このクリスト・レイ教会を造った人たちには強い意志が働いていて、団結しているところがあるわけですね。同じ移民でも、ここの人たちはどこか違うということが、だんだん分か
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中島宏著『クリスト・レイ』第42話
「まったくないとは言わないけど、でも、このブラジルへ移民して来た直接的な動機は他の人たちと一緒で、日本での生活がとても貧しく、何とかそこから抜け出してもっと可能性のある世界に賭けてみようという、そうい