中島宏著『クリスト・レイ』

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第31話

     自分を叱咤するように、頭の中で別のマルコスが声を励ます。 (そうだ、今はそんな不謹慎なことを考えている場合ではないんだ。純粋に教会のことだけを話していればいいんだ)  ふっと、我に返るようにして、マ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第30話

     澄んだ空気の中を歩きながら、二人ともが、かなり高揚した気分を味わっている。  話は、クリスト・レイ教会にまつわるものだから、当然、宗教の問題になっていくけれど、そのことがマルコスにとっては新鮮なもの

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第29話

    「その辺に、クリスト・レイ教会の持つ特殊性があるの。  確かに、イエズス会に繋がったカトリックの教会には違いないけど、はっきりいって私たちの教会は、その歴史的な背景が特別のものを持っているから、こちら

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第28話

    「面白いのはね、アヤ、今こうしてあなたのような日本人と話していますが、これも僕が日本語を覚えようとしたことから始まっていったことであって、もし、そういう機会がなかったら、今でも僕はあなたたち日本人を、

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第27話

     雲ひとつない青空は、まさに秋晴れであり、透明度の高い澄み切った空気は、遥かに高い天空にまでゆっくり上昇していくような雰囲気を持っていた。陽射しは結構強いが、適度に涼しげな風が吹き抜けていくため、ほと

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第26話

     ただそれは、この時代よりも、もう少し遡った頃の話で、開拓されて間もない頃の、いわば最盛期ともいえる時代のことであった。月日の移ろいと共にその後、土地の疲弊が強まっていくにつれて、この地方の農業の勢い

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第25話

     なぜ、そのようなことが可能になったのか。そこにまた、新しい疑問がわいてくる。彼は、特に宗教に興味を持って、それを探求するというようなタイプではないが、しかし、このように日本とキリスト教との関わりを聞

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第24話

    「ところでね、アヤ、今までのあなたの説明が本当に僕に分かったのかどうかということですが、つまり、ここに移民してきた人たちというのは、日本では珍しいキリスト教信者のグループということですね。そういう人た

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第23話

    「だからね、言ってみればここに移民としてやって来た人たちは、みんな同じ宗教を持っているし、みんな親戚というか、家族みたいなものなの。たまたま、その家族全部が、キリスト教のカトリック信者だったということ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第22話

    「そうね、その通りよ。私もずっと、もの心ついたときから、いや、それ以前からもうキリスト教信者だったわね。私の家は代々みんなそうだったし、私が生まれた町や地方でも、ほとんどがそうだったわ」 「ということ

Back to top button