中島宏著『クリスト・レイ』
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中島宏著『クリスト・レイ』第142話
そのときから、私は今の父と母に預けられるということになって、それ以降はずっと、そこで育てられることになったというわけ。牛島あきさんは佐賀県のどこかの結核療養所へ送られたらしいけど、結局、そこから退院
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中島宏著『クリスト・レイ』第141話
その衝撃的な事件というのは、あるきっかけからね、私が両親の本当の娘ではないことが分かってしまったの。それ以前にも、そんなうわさを、ちらりと耳にしたことはあったけど、私は頭から信じなかったし、そんなこ
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中島宏著『クリスト・レイ』第140話
隠れキリシタンの話は、両親からも、それから村の人たちからも、いろいろ聞かされていたから、それなりの知識もあったし、その歴史もある程度は知っていたけど、日本でのキリスト教の実態は実は何も知らなかったわ
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中島宏著『クリスト・レイ』第139話
そして、そこではすべての人たちが貧しく、毎日の生活にも事欠くというほどの状況だったわ。それは、私の小さな頃からもそうだったし、大きくなってからも基本的にはその貧しさは変わらなかったわね。今では多少良
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中島宏著『クリスト・レイ』第137話
その手始めとして、ここの植民地の子弟の皆さんに日本語を教えることになったけど、これも、あの、アゴスチーニョ神父がお膳立てをされて、それに私はただ、乗っかっただけということだから、私が積極的に参加した
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中島宏著『クリスト・レイ』第136話
いきなり同化といっても、日本から移民して来た人たちには無理だから、そういう中間的な形を作ることができればいいなと考えているんだけど。まあ、いってみればこれも、理想的な話かもしれないけど、しかし、いず
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中島宏著『クリスト・レイ』第135話
遥か彼方に遠ざかった祖国は、今の、そしてこれからの私にとっては、直接には関係のない世界ということになるから、そこをいつまでも思い出したり、考え続けたりすることは、私にはあまり、建設的なものとは思えな
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中島宏著『クリスト・レイ』第134話
特に、このブラジルのように不気味な国では、あら、ごめんなさいマルコス、私たち日本人から見るという意味ね、これは。こういう未知の国では、その強いはずであった意志の力も、だんだん時が経つにつれて弱くなっ
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中島宏著『クリスト・レイ』第133話
心配するとすれば、そちらの方がまず、優先されるべきだろうね。真剣に語り合えば、誤解とか曲解というものは、自然に消えていくと僕は信じるし、僕たちもそのぐらいの水準には到達したいと思ってるよ」 マルコ
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中島宏著『クリスト・レイ』第132話
思い切って話してもいいけど、たとえばマルコスがそれを聞いて、よく理解できないとか、理解できてもその考えは受け入れられないとか、という結果になると、やはりこれは話すべきではなかったとして、後で後悔しな