中島宏著『クリスト・レイ』
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中島宏著『クリスト・レイ』第121話
第二の人生を送るはずのこの国で、このような境遇に甘んじなければならないということが、移民して来た人々を堪らない気持ちにさせた。この責任は誰にあるのかと考えてみても詮無いことだが、それをいまさら、ブラ
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中島宏著『クリスト・レイ』第120話
その為、枢軸国の移民たちである、ブラジルにおけるドイツ人、イタリア人、日本人たちは、当然のことながら敵国人という目で見られ、集会、組織だった行動に対して制約の輪が一挙に狭められていった。外国語による
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中島宏著『クリスト・レイ』第119話
アヤにとって、そこには何の問題もなかった。ただ、移民としてこの国にやって来た一世の人々の間には、この変化に対してかなりの動揺があった。 ブラジル人社会との接触がほとんどなく、日本人同士で固まって、
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中島宏著『クリスト・レイ』第118話
総合的に見ればしかし、このゴンザーガ区での農業は、何とか生計を立てていく程度の収入を確保することはできた。が、それ以上のものには、なかなかなり得なかった。それは、ひとつにはこの地区での平均した耕地面
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中島宏著『クリスト・レイ』第117話
もし、マルコスが指摘するように、私に個性的なところがあるとすれば、きっとそういうものが知らない間に、私の中にも入り込んでいて、それが影響しているというふうにも考えられるわね。 でも、もしそうであると
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中島宏著『クリスト・レイ』第116話
つまり、アヤのように広い視野で、ブラジルのことあるいは世界のことを考えるというところがない。彼らの発想は常に、後にしてきた日本に繋がっていて、そこから一歩も出ようとしないという傾向があります。 もち
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中島宏著『クリスト・レイ』第115話
「それがつまり、伝統と文化から生まれてきたものと考えるわけね。この場合は、文化や習慣というものが、必ずしも文明の邪魔をするものではないということなのね。なるほど、そういう見方もあるわけね。やはり、こう
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中島宏著『クリスト・レイ』第114話
もっとも、日本のことは、アヤと知り合いになるまでは、大した知識もなく勉強もしていなかったけど、でも、ここ三年ばかりは結構、僕なりに勉強しましたよ。 そういう古い文化や伝統と共存しつつ、どうして日本
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中島宏著『クリスト・レイ』第113話
移民の末裔たちが、新しく来た移民たちの言語や行動を規制しようとするのは、ちょっとおかしいのじゃないかしら。自分たちの先祖はよかったけど、今の時代はもう、それは認められないというのも何だか納得いかない
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中島宏著『クリスト・レイ』第112話
「それに比べると、あなたや、このゴンザーガ区に住む人たちは、まったく動揺してないように見えるけど、それはなぜでしょう」 「全然、動揺がないというとウソになるけど、でも、私たちの場合はもともとこのブラジ