中島宏著『クリスト・レイ』

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第111話

    「あらあら一生だなんて、随分大げさなことになったわね。それほどの価値は私にはありませんから、その辺りは誤解のないように願います。でも、それを言うなら、マルコス、あなただって私にとっては立派な先生ですよ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第110話

    「いいえ、私はそうは思わないわ。マルコスにはそういう経験がないから理解できないかもしれないけど、人がそれまで生まれ育った国を捨てて、あえて私は、捨ててというけど、つまり、それまでの世界をすべて葬り去る

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第109話

     ただね、このブラジルが安住の地だと思っていたのが、最近はその印象がちょっと崩れてきたようにも見えるわね。いえ、それは別にブラジルに失望したということじゃなくて、何というのかしら、もっとこの国に対して

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第108話

     が、アヤが個人的にそのことを批判してみたところで、世の中が変わって行くわけではない。彼女としては、今起きつつあるこの現象を、できるだけ冷静な頭で判断し、その先がどのようなものになって行くのか、それを

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第107話

     日本からやって来た移民の人々は、ようやくその辺りの現実を見据えて、気持ちの上でもそれに対応し、整理することが出来るようになってきた矢先、第2次世界大戦が勃発し、彼らを取り巻く状況はさらに思いがけない

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第106話

     が、しかし、現実はそれほど簡単なものでも生易しいものでもなかった。  この時期、日本人移民のほとんどすべてといっていい人々が、肝心の資金を稼いで帰国するという目的からは遠く離れた場所に佇まなければな

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第105話

     アメリカほどではなかったが、ブラジルは移民を大々的に受け入れることによって、短期間に多くの外国人たちが増えていくことになった。そして、それらの外国人たちは当然ながら、それぞれの文化と風習をこの国に持

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第104話

     この時の情勢から考えてみても、政府の措置は至極当然のことであったといえる。そしてそれ以降、折からのナショナリズムの流れと相まって、外国人にとっては急速に厳しい状況に突入していくことになった。  そし

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第103話

     多くは移民たちの母国語を習い、ブラジルの国語であるポルトガル語は敬遠、もしくは無視されるという状況にあった。政府は、この部分を強行に改革し、まず子供たちの基礎をポルトガル語での教育として義務付け、そ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第102話

     この時期のブラジルでのナショナリズムは、はっきりいって異常な雰囲気を持つものであったといっていい。少なくともそれは、それまでの自由の国、移民の国というブラジルのイメージからは、程遠い流れを持つもので

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