中島宏著『クリスト・レイ』

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第91話

     はっきりいうとね、私たちの仲間では、もうお互いが分かっているという感じだから、あまりこういう問題に関して話し合うとか議論することはないわけよね。それが、あなただと自然にこんな話が出来る。  何なんで

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第90話

     まあ、移民して来たことの動機は、いってみれば単純明快といったような形のもので、それは、遥か遠くの地平線を目指して行くというような、開拓精神に繋がるものであったかもしれないわね」 「その辺は、僕にもよ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第89話

    現実に、そのように隠れキリシタンがはっきり蔑視されるとか、差別されるという問題があったわけでもないから、それが移民の動機になったということはないわ。 でも、新しい国を目指すとき、それがブラジルのように

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第88話

    「でしょう、マルコス。ということはね、みんな一様だと考えている像は、現実にはそれぞれが異なっているということになるわけでしょう。私が言いたいのは、その点なのよ。イエス キリストの像はすべてまったく同じ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第87話

    「アヤたちの場合は、信仰するのがキリスト教である以上、その中心にあるのはいつも、イエス キリスト像であることは間違いないでしょう。その同じキリスト像が、たとえば、この僕が頭の中に持っているものと異質だ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第86話

     そこにあるものは、ブラジルのカトリック教会とは変わった形のものであり、イエス・キリストの像にも、同様の変化を読み取ることができる。では、それはキリスト教のものではないかと問われれば、明らかにそこには

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第85話

     クリスト・レイ教会を自分たちの手で完成させたというバイタリティも結局、そのように強靭な精神力から生まれてきたものなのであろう。その辺りは確かに、一般の日本人移民とは違っているのではないか。マルコスは

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第84話

     だが、ゴンザーガ地区に集まってグループを作りながら生活している、隠れキリシタンの人々にとってこの出来事は、快哉を叫ぶというほどの雰囲気を持った、特別な高揚感を伴う一つの大きな事件であった。それは、彼

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第83話

     プロミッソンの町について少し触れる。  “プロミッソン”はポルトガル語で、“約束”を意味する。もともとはここが、ノロエステ鉄道のエイトール・レグルー駅から始まっていったことは前述した通りだが、それが

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第82話

     上塚が新たに植民地を創設するという話があちこちの地方の日本人移民たちに伝わると、多くの希望者たちが競うようにして集まって来た。その中には、今村の隠れキリシタンの人々も含まれていた。前述したように、こ

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