中島宏著『クリスト・レイ』

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第81話

     入植者たちの支払い能力を上げるにはまず、彼ら自身が何らかの利益を毎年挙げていかなければ、無理な話ということになる。だが、特にここの場合は、そのほとんどが大した経験もない、半分は素人のような農業者たち

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第80話

    当時の日本では、同じような発想のもとに、朝鮮や中国への進出の流れが大きくなっていたが、上塚の考えは、世界というものを相手にするのであれば、それはアジアに限定するのではなく、もっと広く、ある意味ではもっ

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第79話

     この植民地は、プロミッソンの駅から四キロ辺りの地点から始まり、ボン・スセッソ、ゴンザーガ、ビリグイジーニョの地区にまたがる、約一千四百アルケール(約三千四百ヘクタール)の土地であった。その大半が高地

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第78話

     しかし、契約して来ている以上、今さら破棄することもできず、まして日本に帰ることすらできない。そこのところをどうしてくれるか、というのが人々の抗議であった。だが、上塚にしてみれば、単なるブラジル現地で

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第77話

     享年三十四歳という、誠に早過ぎる死であった。 ただそれでも、この植民地の企画者で、稀に見る指導者であった平野運平の死後も、この植民地は消えることなく存続していき、一九三0年代には組合組織も出来、往年

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第76話

     やっと手に入っても、満足するような量はなく、おまけにその価格は驚くほど高いものであった。しかし、背に腹は代えられず、とにかく入手できるものはすべて購入し、マラリアに罹った人々に与えた。それによって小

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第75話

     喜び勇んで湿地帯の開拓に挑んで、米作を実施していった移民たちは、その一帯にブラジル人たちが誰一人住んでいないことに気が付くこともなく、そこに疑問を感じることさえも一切なかった。ここに入植した日本人た

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第74話

     そこには、日本人たちの特別な思い入れがあった。 「ここであれば、大量の米を作って存分に収穫することができる」  それが、この平野植民地に入植してきた人々の共通した考えであった。  日本人の場合、農業

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第73話

     この平野植民地は、第一回移民の時に通訳として移民たちと共に現場であるブラジル人農場に入り、彼らと苦労を共にした平野運平という人物が、独立自営の集団植民地として開拓を始めた所である。  笠戸丸で、集団

  • 中島宏著『クリスト・レイ』第72話

     プロミッソンの町に彼らが集まって来た理由としては、ブラジルへの日本移民たちの歴史が、その背景としてある。  初期の日本人移民たちが入植した主な地方の一つに、このプロミッソン一帯も含まれるのだが、サン

Back to top button