おやじは、児玉機関と称せられ満州・朝鮮に君臨してた児玉誉士夫のお抱えマッサージ師をしていた山下氏と懇意になり、同盟通信の記者をしながら、その余得で事業を起こした。 記者と云っても実情は、ゆすりたかりの類で、植民地勤務の役人や軍人は汚職の巣窟だから、児玉機関から入手したネタを基に政府の要人を、ゆするのである。脛に傷のある役人共 ...
続きを読む »繁田一家の残党
繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(6)
なんでも、子供の頃に蛍狩りで蛍の居ない方に向かって走るので、親が眼の悪いことに気付き、小さい頃から眼鏡をかけるようになったとか。厚いレンズのせいで、目つきが悪く見えるのだが、素顔は実に人のいいおっさん顔。 指宿温泉の混浴で、団体の女子高校生から「助平のおっさんが、めがねかけて風呂に入ってる」といわれたが、眼鏡なしでは歩けない ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(5)
さすがの仁科も、ひるんだのか引き揚げた様子。 この話を翌日、朝食をとりながら聴いていた永岡が憤然と立って出て行った。しまこが後を追ったが、うつむき加減に引き返してきた。二人の間が終わりになったらしい。 「永ちゃんが、島子ば好いとっちゃ知らんかったばってん」と仁科があやまったが後の祭り。 高松でも、慰安旅行に参加してたサービ ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(4)
サラリーマンの最も悪い癖は、会社が面白くないとか仕事に不満があるとか、赤提灯で愚痴をこぼすことや。 会社が面白くないなんて云わずに、会社を面白くすればいい。おやじや課長連中も寮生も「ハナさんが今度、何をしでかすかと毎日会社に来るのが楽しい」と、云うとったらしい。 女子社員も朝出勤してきたら、未だワイは何もしてないのに、何事 ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(3)
話題は、もっぱら女の話で「おま××」と言う言葉が何回とび出すことやら。 女子社員が聞いたら、おやじも我々寮生も馬鹿にはされなくても信頼されへんのんは明白や。 ネクタイはじめ靴下や下着まで共有となり、同じ釜の飯を食う仲間の連帯感は高まったが、いんきんが寮中に蔓延し大騒ぎとなった。 2階の個室でパーコレーターでコーヒを嗜む潔 ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(2)
その高倉も、あれから40年間で事業にも成功し、個人的にも目標の千人斬りも果たし、アメリカで暮らす孫に毎年会いに行く悠悠自適の生活送っとる。 物置には酒が常に山積み。単身赴任の例に漏れず、毎晩のように酔っ払ってご帰還のおやじは、いつも高級ナイトクラブの選りすぐりの美女を何人か連れてくる。 階下でビール瓶の音がすると二階の高倉 ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(1)
(一)九州の仲間達 ブラジル東北地方最大の都市レシーフェにトロリーバスを導入された伊藤さんは、終戦直後に訪日したが、廃墟と化した焼け野原の祖国の姿に呆然とし、日本は滅びたと失望してブラジルに戻った。 その後、東京オリンピックの年に祖国の復興を半信半疑で再訪し、新幹線に乗り地方都市までが豊かに繁栄してるさまに接し大和民族の偉大 ...
続きを読む »繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(0)
【編集部】本日から小説『繁田一家の残党』の掲載を開始する。著者はカナダ在住で元ブラジル移民の丸木英朗(マルキ ヒデオ)さん。ペンネームはハナブサ・アキラ(英朗)だ。 昭和10(1935)年元旦生まれ。昭和33(1958)年3月に大阪府立大学経済学部卒、東芝放射線(現・東芝メディカル)入社。ブラジル移住、同社代理店総支配人、ア ...
続きを読む »