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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(118)

 ヨーロッパ、アジアにおける戦争の進展、ブラジル政府の国粋主義強化は移民の生活を根本的にゆるがした。新しいブラジルへの移住の道は閉ざされたのだ。1941年8月13日、ブエノスアイレス丸がサントス港に錨をおろし、最後の移民471人が下船した。そのなかに房子の長姉、亡くなったウサグヮーの母、カマドゥーがいた。孫のエイソー(イイムイ  ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(117)

 この独特の味は沖縄出身者以外には奇妙な食べ物と思われたが、ウチマンチュには特別な食べ物で、みんなに好まれた。食べるときはまるで儀式でも行うようにうやうやしく、感謝や賛美の言葉を交わした。それ以前に火にかけられた熱い鍋に近づく者はだれもいない。 「やっと、いただくことができます」とか 「ヤギ汁をいただく機会に恵まれたことを感謝し ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(116)

 この方法を取れば、その場で一番融資を望む者は高い金額を記入する。金を必要としない人は金額を書かないこともある。融資を獲得したものはその場で、みんなに利子を払い、残りの全部を受け取る。頼母子期間の終了日近くに金を受け取るものはみんなから利子をうけとり、最後の人は利子を一銭も払わず掛け金全部を手にすることができる」  頼母子はだい ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(115)

 幸い、学校はそう遠くなかった。灌水用水門の先のボア・エスペランサ・ド・スール街道に出る土の道を歩き、オウロ川の向こう側の石切場を通り、ボア・エスペランサに向けて歩く。アララクァーラを通り過ぎ、500メートル行けば学校に着く。学校はアララクァーラで名の知られた富豪所有のルポ農場の一部に建てられていた。将来、正輝はほかの子たちも学 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(114)

 断片的にせよ、部分的にせよ、情報は日本人たちにきちんと伝わっていた。まぎれもなく強国アメリカに抗する作戦が成功し、アジアへの侵攻速度を増したことが伝わっていたのだ。軍事力の優位が戦場で示され、天皇の賢明さが日本帝国の不滅を象徴していた。そして、それが子どものときから植え付けられた天皇崇拝となって現れていた。  しかし、正輝はこ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(113)

 1941年11月5日、同月末日までに対米外交交渉を行うよう指令がだされたが、11月26日、アメリカは日本側から提示された条件を否定した。  12月1日、東京で軍事および文民閣僚出席のもとに御前会議が行われ、開戦が決定された。ワシントンあての日米外交関係の断絶の公式声明書が作成されたが、国家安全をきして、その発送が遅れた上、ワシ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(112)

 外交面で、日本は国際連盟を脱退して以来、孤立状態にあり、同盟国を必要としていた。共産主義に異議をとなえるヒットラーの国ドイツとロシアの地に侵入したい日本が接近した。そして、1938年その交渉が始まった。ドイツのヨーロッパ大陸の進展が日本を勇気づけた。フランス、英国、オランダの強国がドイツに負けそうになり、アジアの植民地が維持で ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(111)

 1938年4月18日発令の第383令により、外国から資金を受けず、法務省と内務省に合法的に登録された文化、民間、慈善の協会だけが認められることになった。  この間、新国家体制は外国人の活動を押さえつける令を盛んに発布した。  1938年4月27日発布の第293令は保安と国家制度を揺るがす犯罪者の国外追放に関してで、対象者はサボ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(110)

 その卑しい生き方がわが国の労働者と摩擦を引き起こしている。利己主義、不誠実、不従順な生活がブラジルの最も肥沃な地域に民族的、経済的、文化的な異分子集団を形成している。同化させる手段など皆無といえる。日本人の肌の色、特性、生活概念、実利主義を変えることのできるものはいないだろう」  歴史家アルシール・レニャーロは 「ここに記され ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(109)

 その当時、同意見の者がほかにもいたが、ミゲル・デ・コートやフェリックス・ペシャコに扇動され、すでに排日運動が始まっていた。1926年、コートは全国に警告を発した。 「わが祖国は無防衛のまま、アジア人の手にかかろうとしている。神のお助けがないかぎり、闇夜がくるだろう」また、オリヴェイラ・ヴィアナは、何度も「日本人は硫黄と同じだ。 ...

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