道のない道=村上尚子

  • 道のない道=村上尚子=(52)

     「円苔」の客層も決まり、すっかり経営は軌道に乗っていた。しかし洋介は遠慮して、店に来たのは二度くらいであった。それでも彼はクリチーバからやって来るたび、私の報告を楽しんでくれているのが分かる。洋介の

  • 道のない道=村上尚子=(51)

     しかし、必ずそれ以上の金額を、よっちゃんのポケットに入れてやった。理由は、よっちゃんがチップをくれる客と、くれない客の差別をさせないためであった。  夕方、早めに私たち三人は食事を済まさないと、もう

  • 道のない道=村上尚子=(50)

     そんなある日、思ってもみない人間がやってきた。あの小料理屋のばあさんである。 「あたしゃあ、あそこは辞めました。ここで私も働かせてもらえんでっしゃろか」  まるで親戚の家にでも、やって来たような顔。

  • 道のない道=村上尚子=(49)

     が、私の魂が踊っている。これほどの活力が、どこから湧いてくるのか…… バロン・デ・イグアッペ通りに、気に入った場所を見つけた。中国人のもので、貸し出していた。  私とこの女主人は、ポルトガル語がまる

  • 道のない道=村上尚子=(48)

     隣の寿司屋と女将は、大変親しく付き合っている。四才の一人息子も、あどけない顔をして、女将の店に入りびたり、頭を撫でられていた。  ある日、この子が竹竿を持ち込んで来て、客の頭を叩いて回り始めた。女将

  • 道のない道=村上尚子=(47)

     ところが、そこの社長の任期が終わり、次の社長がその家に入って来た。それが、あの叱りつけた人であったとのこと。  前社長の話に戻るが、トイレで用を足しても水も流していない。頭にきたばあさんは、紙に大き

  • 道のない道=村上尚子=(46)

     また、食堂の経営者同士で揉め事が起きる。すると、わざわざクリチーバからやって来て、丸く治めてしまう。何か昔聞いたどこかの親分のような、気風の良さと、人情を持っている男である。  人情といえば、こんな

  • 道のない道=村上尚子=(45)

    「ヤクザではないな」と判断ができた。  彼は、食事を注文してあるらしく、その間、私たちに話しかけてきた。ボリウムのある、テキパキした声。 「いつから、ここに入ったの?」  ということは、十名の女の顔は

  • 道のない道=村上尚子=(44)

     こうすれば、客とのつながりが出来る。おばさんの戦略である。彼女は人懐っこい笑顔で、階下の一室に品物を広げている。  私も先月買った分の金を、部屋に取りに戻った。ない! 鏡台の下へ洋服代として突っ込ん

  • 道のない道=村上尚子=(43)

     といっても、それっきりで、話題を持たない私は、やはり「枯れ木も……」の存在であった。しかし他の女たちも大同小異と思える。なのに近頃のマダムは私にだけ冷たい。それも段々、度を超えてきた。私はやっとある

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