道のない道=村上尚子
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道のない道=村上尚子=(22)
父は、あまりの苦しさに、お金を借りる手紙を書いたらしい。日が過ぎて忘れた頃に、今度は馬車を使って、保明が豚を五頭持ってきた。どうやら、借金の代わりに豚で払ったようだ。山城さんの豚小屋に、保明の持って
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道のない道=村上尚子=(21)
この日は、みなと違う場所へ仕事に出かけた。菜園用の畑に赴いたのだ。この畑へ、ひろ子を置いて去ることにした(後で気がついたら、彼らが父母へ子供を届けてくれる)と思っていた。ごたごたした、ひろ子の品物を
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道のない道=村上尚子=(20)
家計の財布は一郎が握っていて、それに何の不満もなかった。年中現金の顔はあまり見ない世界にいたので、家計を任されようが、そうでなかろうが気にもならない。 一週間もした頃、一応家の中のことは慣れたので
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道のない道=村上尚子=(19)
ひろ子が歩くようになった。一歩一歩両手を広げて、私へ向かって来る。嬉しそうに……いつでも支えられるように、私も身をこごめて両手を広げた。そんなに大きくなってきたひろ子。これを毎日おんぶしての草取りで
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道のない道=村上尚子=(18)
「母が、さすがに私たちのことを放っておけずに、父を説得したのだろうか?」 その時は、何が何だか分からずに、すぐに山城家に向かった。私は内心あのおじさんなら、と思えたからでもあるが。無一文の私たちは、
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道のない道=村上尚子=(17)
父の説明によると、毒蛇の体の模様は地味で頭は小さく三角形ということであった。確かに体の模様はおとなしかった。 翌日、三キロ先の太田さん宅へあげた。ご主人はいそいそと蛇料理にとりかかった。この家でも
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道のない道=村上尚子=(16)
星が目に痛いほど光っている。それを眺めながら、「私たちは、この先どうなって行くのだろう」と思い巡らした。 茂夫は、少しづつ笑顔が戻ってきた。夜、ランプの下で、雑誌を読んで聞かせると、楽しむ反応を示
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道のない道=村上尚子=(15)
「お父さんは、あの恩給で自分自身をダメにしてしもうた……」 この知らせを境に、父はいよいよワンマンになり、皆を頭から押さえ付けた。何より茂夫に対する苛めが、度を越してきた。ついにこの孤独な彼を見かね
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道のない道=村上尚子=(14)
何やかやと大変なことが押し寄せたが、一段落した。こちらも人のことどころではない。産後の養生のため、炊事は私の当番になった。その後、川中さんの指導のおかげで、こちらも自給自足の体制に入っていった。
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道のない道=村上尚子=(13)
さて、茂夫が一時身を寄せていた,川中家の説明をしたい。 半年前、同県人ということで食事に招待されたのだ。四キロメートル離れている。おじさん(七十歳)、おばさん(五十五歳)、娘の静加(十九歳)、息子