連載小説
-
父の遺志を遂行した金城郁太郎の移民物語=上原武夫=(3)
ブラジルへの移民―その動機 そのころのことである。ブラジル近親者呼び寄せ移民再開のニュースに接し心動かされ、妻に持ちかけた。丸いお膳に熱い芋を囲み家族揃って夕食の最中であった。 「ネエ、かあちゃん、
-
父の遺志を遂行した金城郁太郎の移民物語=上原武夫=(2)
兵役召集――ウンチェーと恩賜のたばこ それから間もなくしてから彼は召集され、八重山(島)に配属された。 そのころ部隊は、ものすごい食糧難にみまわれ、隊長も悩んでいたという。郁太郎は隊長に申し出た。「
-
父の遺志を遂行した金城郁太郎の移民物語=上原武夫=(1)
戦前・戦後のブラジル日本移民約25万人、それぞれが大きな夢と希望を抱き地球の反対側ブラジルまでやって来た。その殆んどが農業移民であった。 だが、日本での宣伝やそれぞれが想像していたこととはあまりにも
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(9)
林田は何か猪瀬に耳打ちをしていた。猪瀬の目が眼鏡ごしにきらり光った。職業柄、この連中は鹿を追う漁師に似ている。「見せてくれ」というのである。宴の乱れた会場を抜け出した一行は、小楠の農場に向った。 納
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(8)
鹿さんはマキを補充しながら、「おいおい、先ほどのアーリョの話はどうなった」「ああ、あのかぜ薬か」大貫は無造作に言った。 牛はもう手放しにしてしまったし、用のないアーリョだから、「食べたらいい」と小楠
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(7)
牛にはそれぞれ、日本名ブラジル名を太郎、花子、テレザ、タチアナ、というように命名していた。太郎は日ごろボテコまで800メートルの道程を、出荷用の乳缶を載せて運ぶのに訓練していたので、カロッサは嫌がら
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(6)
だが季節外れの降霜のため、せっかく生育のよい小麦も、毎年穂孕期に被害を蒙り、入植者は断念してミーリョを植えたり、近くのパルプ工場に働きに行ったりして、土地を手離す者が増えていた。 小楠の隣耕地も、ジ
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(5)
それがカロッサに積む時、毎朝乳缶の蓋をとってみると、どの缶も必ずといってよいほど乳が盗まれている。乳はひと晩置くうちに。上面に黄色い膜を張るものである。その乳の固まりを集めて煮つめると手製のマンテー
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(4)
地元の牧場主たちは、牛を自由に放しておけば、一日中、足首を湿地に踏み込んでいると、足の爪際から病気に犯されるので、この土地は放ってあるのだそうだが、朝夕一時間ずつの放牧なら、何の支障もないはずである
-
アーリョ・ショウナン裏話=炉辺談話=荒木桃里=(3)
単身青年のこの二人を呼び寄せてくれた石川庄衛は、この湖に面した土地の一部を借地して、種子栽培の農場を経営していた。この砂丘は、カマボコ状のゆるやかな丘になって海岸線と画しているが、反対側のつまり湖に