連載小説

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(18)

     これは彼のひねくれた妄想ではないのを、不具でうまれたつぎの児が、太一夫婦の将来を暗示してくれた。その児は臍の緒がしまっていなかった。乳を吸う力もない虚弱児であった。太一もこれはとても育たないと望みを

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(17)

     千恵は夫の手をとって、自分の腹にあてがった。そこでは一つの命が育とうという意思で、母の胎内でおどっていた。太一はつい感傷的になって泣けてきた。泣けてしかたがなかった。これで夫婦の仲はおさまったようで

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(16)

     それも初夜がうまくすごせたからであった。床にはいると千恵のほうより積極にでてきて、太一の手をとって自分の乳房にあてがい、ー可愛がってねーと甘えた。太一はなんの不安もなく官能の喜びをあじわった。ひとり

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(15)

     愛なき者の婚姻の悲劇であった。それにひきかえ友人は、神によって結ばれた緑は、人為によっては離せないという堅い信念よりきているように思えた。万事ことにあたって静かなること林のごとしという心境に太一は打

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(14)

     これで自分らの縁はおわりだと思うと、足もとに亀裂がはしり深淵に転落してゆく気持ちになった。 ところが、それは太一の思い違いで、彼は女性には月経のあるのもしらなかったが、はなもそのことは言わなかった。

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(13)

     太一は自分では偏屈とはおもってはいないが、どういうものか人からは好かれないのであった、母は好いてくれたが、父からは嫌われ、弟妹たちからは疎んじられた。そしてはなからは逃げられている。 もしこれが、は

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(12)

     この乞食は若い頃、馬喰をたつきとして世間をわたっていた。その間にかかわりあったかずかずの女たち、どちらかといえば身分の上のおなごとの遍歴の物語である。ーわたしは何人ものおなごを好きましたし、また好か

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(11)

    宿世の縁 二(続)  松山太一は、ひと月ほど前に、亡妻の一回忌をどのように行なうかについて考えていたのに、息子からその件について聞かれたときは、すっかり度忘れをしていた。 彼には折々このような現象がお

  • 宿世(すくせ)の縁=松井太郎=(10)

     おれたち夫婦は五十年にちかく、悲喜ともどもに身にうけて暮らしてきながら、ついに心は通じあわなかったのかと、太一は慄然として自分の孤独を知るのであった。 四十九日の法要はすみ形見分けもすんだのに、太一

  • ガウショ物語=(46)=ファラッポスの決闘=《終》=とどめを刺すなら今だ!

     歩いていくと、遥か向うから川岸を降りてくる人影が見え、わしの後ろの方からは別の、もう一人がやって来るのに気がついた。 ゆっくりと、まるで気楽な散歩をしているみたいに、ふたりは近づいてきた。 ああ、言

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