連載小説

  • セーラ・ガウーシャの農村の光景(Foto Eduardo Seidl/Palacio Piratini)

    ガウショ物語=(28)=娘の黒髪=《3》=「ファラッポスをやっつけろ」

    「ですが……やつを殺さないのですか…… 縛るだけですか……」「そうだ!脅してやるだけだ……」「それで、愛人のほうは……ぶん殴るんじゃ……ないんですか……」「いや! 恥をかかせるだけでいい……」「じゃ、

  • パナマを越えて=本間剛夫=83

     私はためらいながら、「そのことなら、ゲバラと会っています」とエスタニスラウ杜の会談のもようを話すと、大使は「そうだったのか」と大きく頷いた。 私には三人の子がいた。一人は中学、二人はまだ小学生だった

  • ガウショ物語=(27)=娘の黒髪 =《2》=「とびきり上等な焼肉だ!」

     牛飼いのジュッカ・ピクマンが先頭を行き、おれ達を枝や蔓が絡み合った茂みに導き込んだ。枝を切り落としたり、棘から身を守ったり、血を吸う薮蚊を手で叩きながら森の中を進んだ……。誰も口をきく者はいない。若

  • パナマを越えて=本間剛夫=82

     翌日昼ちかくなってエスタニスラウから電話がきた。それは外務省の役人が通訳と案内役をつとめてくれることになったから、今日来なくてもいいというのだ。アルゼンチン人のゲバラが偽名し、しかもブラジル人として

  • パナマを越えて=本間剛夫=81

     そのとき傍らにいた三十歳ほどの男がエスタニスラウに近づいて握手を交わしながら私に冷たい視線を投げた。エスタニスラウはその青年と旧知の仲なのだろうか。そのことを質そうとしたが、彼が同伴者の紹介を始めた

  • パナマを越えて=本間剛夫=80

     その夜、コーチの顔が唐突に私の瞼に浮び上がった。コーチは今、どこにいるのだろう。三年間、殆ど彼の存在を忘れていたのに、珍しく彼は笑顔を作って眼の前に立っていた。ホンジュラスからパナマ、横浜へと約二カ

  • パナマを越えて=本間剛夫=79

     エリカ姉妹の処置をめぐって敵対してきた副官とは思えない恩讐を超えた炎々とした声色だった。二人の和解は私にとっても嬉しかった。二人の間に蟠(わだかま)りの種子を蒔いたのは私だったからだ。「そうですな、

  • パナマを越えて=本間剛夫=78

     私の胸の中で息絶えた黒田上等兵の血ぬられた小石が上衣のポケットにある……。私は無意識に、その小さい石魂を撫でていた。そのとき、不意に、洞窟に埋れた同僚たち、それから不十分な看護の下で死んでいった三百

  • ポルト・アレグレにある有名な「ラッサドールの像」(Foto: Claudio Fachel/Palacio Piratini)

    ガウショ物語=(26)=娘の黒髪=《1》=馬に乗った別人になる男

    「お前さん、わしが長い間、女の髪で作った馬の轡や端綱を使っていたこと知ってるかね?……もっとも、そのことにまったく悪意はなかったんだが」 ずっと後で、髪の主が死んだと聞いた。それを知ってすぐに馬で駆け

  • パナマを越えて=本間剛夫=77

     エリカは瞼を瞬いた。 そのとき庶務の兵隊が入って来たので話は中断した。今も君を愛しているというには、今のエリカは遠く高い存在であることを悟らなければならなかったが、それでも彼女の愛を確かめたかった。

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