ニッケイ新聞 2014年4月18日 黒い背広を粋に着こなした黒人が助手席と後部座席のドアを同時に開けると、ペドロとアレマンがなんとなく落ち着かずに降りた。その時、アレマンがヘマをして腰の拳銃を一瞬黒人に見せてしまった。 その黒人が中に入ろうとする三人に、 「(ちょっと、こちらへ)」そう言って、大きな身体を張って三人の行く手を遮 ...
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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(139)
ニッケイ新聞 2014年4月17日 不思議に、ジョージの瞼の裏に、繁華街を目立たない様に歩く森口が浮かんだ。次に、地下鉄前のタクシー乗り場で森口が、GM車のタクシーに乗り込む光景が浮かんだ。その森口の後に続いて乗り込む背の低い人影も浮かんだ。 「(タクシーだ!)」ジョージは不思議な霊感を感じてそう叫んだ。同時に一台のGM車のタ ...
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ニッケイ新聞 2014年4月16日 モニターの警報音をリセットしながら看護婦が気の毒そうな顔で、 「(残念でした。出来るだけの事はしましたが・・・)」 「(付き添いは?)」 「(警官が廊下に待機しています)」 「(廊下に?誰もいなかったが)」 嫌な予感で険しい顔になったジョージは慌てて、 「(ちょっと、死体を拝ませてくれ!)」 ...
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ニッケイ新聞 2014年4月15日 ジョージは粘る西領事に譲らず割勘とし、あの老婦人にブラジル式の優しい抱擁をしてから、日本食好きの新米刑事二人を促し、『天すし』を出た。 「(留置所に直行だ!)」ジョージはよく当たる嫌な予感を感じて、十メートル離れた駐車場から急発進した。 後を追おうとした遠藤副領事は、車のエンジンを掛ける間も ...
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ニッケイ新聞 2014年4月12日 「誰とお約束を?」 「証拠を掴んで必ず裁判に引き出すと、殺された女と約束した・・・んです」 「なんだ、ふざけた事を! 西領事、帰りましょうよ! 訳の分からない日本語で話す二世にかまっている暇はありませんよ」遠藤副領事が怒って大声で言った。 隣のテーブルで孫達に囲まれて幸せそうに食事していた七十 ...
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ニッケイ新聞 2014年4月11日 十三時きっかりに西領事と遠藤副領事が『天すし』ののれんをくぐった。 「いらっしゃーい」この店の寿司マンでオーナーのオヤジが景気よく迎えた。 先に来ていたジョージが二人の雰囲気から領事と察知してテーブルから立ち上がり、自然に西領事を見分け握手しながら、 「ジョージ・ウエムラです」 「西です。ど ...
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ニッケイ新聞 2014年4月10日 【終戦後の食糧難や人口問題を解決する為の廃民政策がそのまま改政されず残念だと総領事が洩らしていました。それに、日本政府は二重国籍の問題でブラジル政府の立場を尊重しているとも言っていました】 「ブラジルはそんな事気にしません。もっと寛容な国です。逆にブラジル政府の発想は、二重国籍の国民を誇りに思 ...
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ニッケイ新聞 2014年4月9日 【なんだと~、・・・・・・、電話かわりました。西と申します。部下が電話に向かって怒鳴ったりしてどうもすみません。どうなさいました?】 「いえ、別に・・・、ただ、エンドウさんがどうも・・・」 【失礼しました。貴方は二世の方ですか? 日本語がお達者ですね】 「褒められるレベルではありません」 電話の ...
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ニッケイ新聞 2014年4月8日 「なんで困るんですか? それに、なんで面倒くさい手続きを・・・、日本人同士もっと、シンプルに事を運びましょうよ」 【シンプルに? 君は二世だろう。日本人同士とは言えないじゃないか】 「分かりました。では、どうすれば・・・」 【ちゃんとした手続きを踏んでもらうしかないだろう】 「どう云う手続きをす ...
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ニッケイ新聞 2014年4月4日 夕方、ジョージはインテルツール社で仕事を終えアパートに戻った。 「ジョージさん、夕飯が出来ています」中嶋和尚に迎えられた。 「いやー、いつも・・・、森口をブタ箱にいれました。少し疲れました」ジョージは冷蔵庫からビールを取出し、食卓に座った。 「お疲れの様ですね。さっき、古川記者からこちらに来る ...
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