連載小説
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第30回
ニッケイ新聞 2013年3月9日 佐織の方も甘い言葉を期待していたわけでもなくそれで納得してくれた。二人で暮らすのが自然だと小宮も佐織もそう思えるようになったから結婚する。それだけのことだった。
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第29回
ニッケイ新聞 2013年3月8日 部落出身であるという理由で結婚が破談になる事実を、小宮は最も身近なところで体験した。この事件以来、姉は見合いも恋愛もせずに、今も独身だ。そんな姉の姿を見ているので、
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第28回
ニッケイ新聞 2013年3月7日 しかし、それが幻想でしかないことを小宮は高校三年の時に思い知らされた。小宮には四歳年が離れた勝ち気な性格の姉真弓がいた。真弓の結婚は式直前に破談になったのだ。表向き
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第27回
ニッケイ新聞 2013年3月6日 何度も同じ経験をするうちに、用事があるとか、勉強、宿題というのは嘘で、引き離される原因は小宮の住む地区にあることが、子供ながらわかってくる。 そうした大人の陰湿さ
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第26回
ニッケイ新聞 2013年3月5日 小宮が佐織を食事に誘う時も、「近いうちに食事を一緒にしていただけませんか」と、ただ用件を伝えるだけで、ぶっきらぼうな感じさえした。しかし、寡黙な父親を見て育った佐織
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第25回
ニッケイ新聞 2013年3月2日 佐織の実家は代々農家で、広大な土地を所有していた。牧畜をやるほどの広さはないにしても、野菜を中心に生産する近郊農業を営むには十分だった。農家を継ぐ者が減少しているな
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第24回
ニッケイ新聞 2013年3月1日 ホンダはアマゾン中流の都市マナウスに築いた現地工場で二輪車の生産を開始、リオやサンパウロの大都市に出回ったオートバイの整備、修理の技術者が不足していた。小宮は日本で
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第23回
ニッケイ新聞 2013年2月28日 彼女は百クルゼイロ札を二枚だけ取り出して、残りは封筒のままブラジャーの中に挟み込んだ。 「ちょっと待ってて」 テレーザはフロアで踊っている女性の一人を、大声で呼
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第22回
ニッケイ新聞 2013年2月27日 日本から持って来たカメラは三台ほどあった。ドルが完全に底を着くと、児玉はまず一台目のカメラを売った。久し振りに懐に金を入れて、ミッシェルに顔を出した。テレーザはま
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第21回
ニッケイ新聞 2013年2月26日 児玉はテレーザが本気で言っているとは思っていなかった。 「ああ」 「コダマなら、そう言ってくれると思った」 翌朝、トニーニョが寝室に入ってきた。二人はまだベッド