連載小説
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第10回
ニッケイ新聞 2013年2月8日 中学一年生の時、児玉は横浜市長津田で暮らしていた。卒業式を目前に控えた頃、神奈川県の作文大会である女子生徒が受賞し、朝礼でその作文が本人によって朗読された。金という
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第9回
ニッケイ新聞 2013年2月7日 「いや、わからんね」 「ブラジルは出生地主義を取っているんです。観光客であろうと、移民の子であろうと、あるいは密入国者の子供であっても、ブラジルで生まれた子供はすべて
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第8回
ニッケイ新聞 2013年2月6日 児玉もブラジル人の賑やかさに閉口した。しかし、二人ともホテルで十分に睡眠を取ったせいか、それほど気にはならなかった。ブラジル人の席は、どこの席もよく食べ、よく飲んで
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第7回
ニッケイ新聞 2013年2月5日付け 美子の口調が急に変わった。ベッドから体を起こすと、児玉の顔を上から覗き込み尖った声で言った。 「私と同じような人間をこの世に生みたくないの」 「俺はそんな生き方
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第6回
ニッケイ新聞 2013年2月2日付け しかし、児玉が思っていた以上に性的には大人で、男にリードされるセックスをいつも拒否していた。美子の望むように児玉がベッドに大の字になると、美子は男性自身を口に含
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第5回
ニッケイ新聞 2013年2月1日付け 児玉の唇がその白い肌を這っている。 「私を抱いた男は皆、そう言うよ」 児玉を挑発するように美子が言った。児玉は美子の乳首を吸った。美子の呼吸が荒くなる。美子は
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第4回
ニッケイ新聞 2013年1月31日付け やがて機内への搭乗が始まった。すべての乗客が席に着いたが、空席が目立った。若い技術移民は飛行機に乗るのが初めてなのか、窓側の空席を見つけると離陸前に移動した。
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第3回
ニッケイ新聞 2013年1月30日付け 母親は「苦労して大学にやったのに、地球の反対側の新聞社に就職することはないだろう」としきりに嘆いていた。 その夜、美子から電話が入った。 「明日の夜ですね、
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第2回
ニッケイ新聞 2013年1月29日付け 折原は福岡県出身で大学にはいつも下駄を履いてやってきた。山に登る前日はリュックサックを背負い文学部の門から校舎に続くスロープを歩いている姿がよく見られた。背が
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連載小説=移り住みし者たち=麻野 涼=第1回
ニッケイ新聞 2013年1月25日付け 一九七五年 羽田国際空港 「もう、おまえとは会えないかも知れないな」 大学時代の友人、越生孝治が言った。半年ぶりに会った越生はスーツ姿だったが、どこかぎこちな