連載小説
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中島宏著『クリスト・レイ』第78話
しかし、契約して来ている以上、今さら破棄することもできず、まして日本に帰ることすらできない。そこのところをどうしてくれるか、というのが人々の抗議であった。だが、上塚にしてみれば、単なるブラジル現地で
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中島宏著『クリスト・レイ』第77話
享年三十四歳という、誠に早過ぎる死であった。 ただそれでも、この植民地の企画者で、稀に見る指導者であった平野運平の死後も、この植民地は消えることなく存続していき、一九三0年代には組合組織も出来、往年
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中島宏著『クリスト・レイ』第76話
やっと手に入っても、満足するような量はなく、おまけにその価格は驚くほど高いものであった。しかし、背に腹は代えられず、とにかく入手できるものはすべて購入し、マラリアに罹った人々に与えた。それによって小
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中島宏著『クリスト・レイ』第75話
喜び勇んで湿地帯の開拓に挑んで、米作を実施していった移民たちは、その一帯にブラジル人たちが誰一人住んでいないことに気が付くこともなく、そこに疑問を感じることさえも一切なかった。ここに入植した日本人た
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中島宏著『クリスト・レイ』第74話
そこには、日本人たちの特別な思い入れがあった。 「ここであれば、大量の米を作って存分に収穫することができる」 それが、この平野植民地に入植してきた人々の共通した考えであった。 日本人の場合、農業
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中島宏著『クリスト・レイ』第73話
この平野植民地は、第一回移民の時に通訳として移民たちと共に現場であるブラジル人農場に入り、彼らと苦労を共にした平野運平という人物が、独立自営の集団植民地として開拓を始めた所である。 笠戸丸で、集団
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中島宏著『クリスト・レイ』第72話
プロミッソンの町に彼らが集まって来た理由としては、ブラジルへの日本移民たちの歴史が、その背景としてある。 初期の日本人移民たちが入植した主な地方の一つに、このプロミッソン一帯も含まれるのだが、サン
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中島宏著『クリスト・レイ』第71話
大成功して故郷に錦を飾るという夢は、少なくとも今までの状況の中では結局、儚い夢となって終わってしまいそうな雰囲気にあった。少なくともそれは、出稼ぎを目的としていた人々にとっては、まことに厳しい現実で
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中島宏著『クリスト・レイ』第70話
これもいってみれば、日本の近代史の中の一コマなのだが、それに翻弄されたのは想像以上に多くの人々であったことは歴史上の事実である。そのような時代の背景があったために、ブラジルへの移民が成立したというこ
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中島宏著『クリスト・レイ』第69話
そこにあるものは、移民としての熱い思いと燃え立つような高揚感であり、それは、世界中からこのブラジルに渡ってくる人々に共通して見られるものであろう。その点に関しては、見かけは違っているものの、その意図