連載小説
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中島宏著『クリスト・レイ』第58話
「しかし、それはおかしいではないか。自分はブラジル人で、ここはブラジルなんだから、決して外国人というわけではない。外国人ということであれば、ここにいる日本人移民の人たちこそみんな、ガイジンと呼ぶべきだ
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中島宏著『クリスト・レイ』第57話
正式に移民としてやって来る、世界中の人々に対して同じ機会を与え、同じ保証を与えるという点においては、この国は誠に大国の度量を備えているといっていい。 ただ、まったく違った国からやって来る以上、最初
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中島宏著『クリスト・レイ』第56話
二人の場合、ほぼバイリンガルになりつつあったが、そのことが後になって大きな意味を持つことになるとは、無論この時点では二人ともまだ知る由もない。この時期は、二人は日本語だけで話しているが、これはマルコ
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中島宏著『クリスト・レイ』第55話
この時代、すでにトラック、小型トラックなどは農業では珍しくなく、かなり普及していて、マルコスの農場でも大型、小型、合わせて、三台ほど持っていて、結構忙しく走り回っていた。彼自身も仕事の関係でいつもト
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中島宏著『クリスト・レイ』第54話
個人的な感情をそこに投入するのは、いささか常識から外れているようにも思われるのだが、彼にとっては、これらのすべてが互いに繋がっているというふうに考えているから、そこに矛盾はない。ここにある隠れキリシ
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中島宏著『クリスト・レイ』第53話
無論、マルコスだってカトリックの信者であるから、キリスト教に対する思いは一緒のはずなのだが、どうも、その辺りになるとどことなく違和感を持ってしまう。どこが違うのか、何が違うのか、と考えてみても、はっ
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中島宏著『クリスト・レイ』第52話
主役は馬車であったが、植民地自体が共同で所有するトラックも、農業に使う合間を縫うようにして使われた。大体、教会の建設は長期間にわたって、ゆっくり建設されていくのが普通なのだが、このクリスト レイ教会
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中島宏著『クリスト・レイ』第51話
貧しい日本からの移民たちが、その限られた収入の中から、お金を出し合って建てたものである以上、それが一種変わった形のものであったとしても、そこには何の不思議もなかった。 たとえその教会が粗末なもので
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中島宏著『クリスト・レイ』第50話
もっとも、マルコス自身はまだ、そこまでのことには気付いていない。いや、薄々感じてはいるのだが、しかし、それに対する確信は持っていない。もし、アヤが存在していなければ、おそらく、そこに展開する風景はそ
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中島宏著『クリスト・レイ』第49話
神父さんたちの場合は当然、日本語が直接キリスト教という宗教の問題に結びついているけど、そういうことを抜きにしても結局、日本語を勉強するということは、異国に移民して来た人たちから次の世代へ繋いで行くた