連載小説
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(250)
多くの人々の生活を巻きこんだ臣道聯盟の裁判はいまでも尾を引いていた。 まだ何人もの被告が尋問を受けておらず、証人した者たちもよび出されていなかった。裁判官の証言召喚が被告の移転のため本人に届くのに
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(249)
ほんの少しの暇があれば、浜辺にいける。宿直がない水曜日か木曜日の夜、サントスのヴィラ・ベルミロ球場まで足を延ばしサッカーの試合が見られるかもしれない。チームにはジット、ラエルシ、フォルミガ、ペペ、パ
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(248)
人波に混ざり、正輝の従兄弟のヨシアキがこの儀式を見守っていた。ネナと隣にすむシッコの問題以来、二人は仲たがいして行き来が途絶えていた。ヨシアキはロンドリーナに住んでいたマサコと結婚し、スタジアムに妻
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(247)
200人ちかい同じケープとユニフォームの卒業生のなかに息子を見つけた房子はそって涙を拭いた。正輝を肘でつつき、指差しながら、何かささやいた。正輝もニーチャンのいるところを指差して末っ子に教えた。両親
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(246)
家族はみな結婚式やその他の祝い事に出席するためよそ行きの服を持っていた。正輝のは紺のカシミアの背広、白いワイシャツ、結んだままにしてある縦じまのネクタイ、いつまで経っても磨り減らないラテックスの底の
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(245)
解決しなければならない問題がいくつかあった。どうやって、競技場まで行くのか? 便乗させてもらうにしても、自由市場の仲間はトラックしかもっていない。知人や友だちで自動車をもっている人がいないのだ。競
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(244)
房子はポルトガル語をまず、片仮名に書き換える。このとき、無声音の子音は母音を足し、一音に、アクセントのある母音は長音に、Oの発音は口を閉ざす。音によっては語り手がかってに変える。 このような方法に
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(243)
房子はポマードをいつもこう呼んでいた。ジュンジはこの薬が丸くて底の浅い、表にラベルがない缶に入っていることは知って、その名前に疑問をもったことはない。もう何回も買ったことがある。薬局に着くなり、声を
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(242)
ブラジルの国を守るりっぱな軍人に成長していたのだ。軍服に身をかためた息子の姿は、サントアンドレの多くの若者が義務兵役で入隊する予備役軍人285射撃部隊の制服姿の者と、くらべものにならないと内心思った
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(241)
これが弁護士の弁明だった。 保久原正輝の主張で最も注目され、評価されたのはアララクァーラでは一度もテロ行為がなされなかった事実だ。 臣道聯盟の会員はみな働き者で、性穏和で、農業、商業などの分野に