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連載小説

臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(229)

 そこで、正輝が参加している頼母子に入りたいと謙虚に申しでた。頼母子はそのころ多くの日本の人間で行われていた。沖縄人の間でも「ユレー」とよばれ、最初の日にはヒジャー・ヌ・シル(ヤギ汁)をみんなで食べる。正輝も胴元として、自分の家でやっていた。  大城は高江洲正吉という沖縄人といっしょにきた。高江洲は1934年ブラジルにきた移民で ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(228)

 家にはネナと下の三人の子どもしかいなかった。銅像広場のオリヴェイラ先生の中学予備校に通っているツーコ、小学校3年生のヨシコと1年生のジュンジだ。四人は母といっしょに恐ろしいシーンを眺めた。息子を叩きつけながら正輝はうなり声を上げていた。家にマンガを置くことは絶対に許さないと正輝はいつもいっていたのにい、ミーチはそれに従わなかっ ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(227)

 こういって、初めの一本をすすめた。そのことを知ったとき、いつもだったら、叱りつけるのに、アキミツを罰することはできなかった。彼自身、そのころのはやり言葉で「煙突の煙」とよばれるぐらいのヘビースモーカーだったからだ。  安くて「胸がやられる」といわれるほどニコチンが多いマセドニアというタバコだった。そのころ「マセドニアこそ、純粋 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(226)

 アキミツは中学校を中退し、ネウザ洗濯店で働いていた。保久原家がサントアンドレ市に引っ越したとき、マサユキを指導してくれた松吉じいさんの洗濯店だ。  セーキは暇なとき近所を歩き廻り捕まえてくる小鳥の世話をしているが、サッカーに興味をもつようになった。家族の買い物のつり銭を少しずつ貯めて、ユニホームを買ったのだ。ゴールキーパーだか ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(225)

 缶の穴のところに瓶を水平に突っ込む。もう一本は縦にして、缶の真ん中に入れ、はじめの瓶にもたせかける。片手で瓶が動かないようにし、もう一方の手で、おがくずを入れ、かたまるまで上から押す。そのあと、おがくずがくずれないようそっとビンを取り出す。すると、L型のトンネルができる。  しわくちゃにした新聞紙でおがくずに火をつける。このと ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(224)

 左側の廊下の先の寝室はニーチャン、アキミツ、セーキ、ミーチの4人の男子たちに与えられた。一方のダブルベッドには上の二人、もう一方は下の二人が使った。居間の右側の小さい部屋にはシングルベッドにネナとツーコが二人逆さまに寝るようにした。奥の大きな寝室にはダブルベッドとシングルベッドをくっつけて、正輝夫婦といちばん下のヨシコとジュン ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(223)

 そのころ、「家」という言葉は屋根と壁でできた住まいを指していた。人によっては正輝一家の住んでいるところをみて、「家」とはいわなかったかもしれない。確かに前の掘っ立て小屋より多少ましだったが…だが、マッシャードス区とドン・ペドロ・プリメイロ街の2軒にくらべると、雲泥の差があるのだ。  家の前面の壁は左側からみていくと、まず、白く ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(222)

 サンパウロから売り物を運んでくるためと、朝市が立つ場所に屋台を運んでいくためにトラックが必要だ。月曜日はヴィラ・アルピーナスのIAPI、火曜日は家の近くで、ドナ・ゲルトゥルデス街の角から始まるアビーリオ・ソアレス街、水曜日はサンタ・テレジーニァ、木曜日はジャルジン区のフィゲイラス街、金曜日は中心地のジェネラル・グリセーリオ街、 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(221)

 ほかの業者より苦しいことを察し福知は、ニンニク1箱の原価だけを受け取った。ニンニクの箱は底が六角形の角柱という変わった形で、板一枚はずせば中味がとりだせる。ニンニクは白い皮に包まれているので、そのままでは見かけが悪い。桃色の皮が出てくるまで白い皮をむくと、客の目を引いた。正輝はニンニク玉を四つか五つのひと山にした。ひと山には大 ...

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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(220)

 とくに、日本の敗戦を認めた正輝がブラジルに根を下ろそうと決意し、子どもたちの教育のため都会に移ったことに心を打たれた。ネーヴェス氏は子どもたちが真のブラジル人になるためには、どんな援助も惜しまないことを約束したほどだ。  マサユキを、洗濯業よりずっとすぐれた職につけるようにしてくれたのは、ほかでもないこのネーヴェス氏だった。ま ...

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