連載小説
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(199)
いつもの夕食より4、5時間おくれて家族がそろってジャカランダーのテーブルについたのは11時過ぎてからだ。その夜、小言など一切なかった。遅い夕食にかかわらず、和やかな雰囲気が漂っていた。ミーチだけが、
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(198)
ある日、ミーチが夕食に現れなかった。怒った父は「また、田場の家なのか?」といって、アキミツに迎えに行かせたが、少したって、今日は一日ミーチは姿を見せなかったことを告げた。もう、暗くなりかかっている。
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(197)
結局、正輝はセーキの進学をあきらめるほかなかった、息子は働き者だった。小鳥を観察したり、捕まえたりするのが目的かもしれないが、とにかく朝早く起きる。与えられた仕事はかならずやりとげる。農作業はだれよ
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(196)
ところが母親が怒り出した。彼女は精神の病があるようだ。ときどき、子どもの服を取り替えるのを忘れる。正輝の子どもたちはこの女に気をつけていた。別に周りの人に危害を加える訳ではないが、変な行動に出たり、
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(195)
「おまえたちより兄さんだ」といっても、だれもそう扱ってくれず、腹を立てた。たしかに兄さんには違いないが、この家では通用しなかった。たった一人だけ、長男が特別扱いを受けたのだ。アキミツの不満は下の兄弟
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(194)
アンジェリーナ夫人の家の時間のかかる配達がくり返されるようになると、房子は自分が考えていることが起きていると確信した。マサユキにそれとなく聞いてみた。「アンジェリーナ夫人はパパによくしてくれるの?」
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(193)
樽が町に出たのは松吉も農地からはなれ、近郊でなにか別の仕事を始めようと考えていたからだ。行き先はサンカルロスではなく、首都サンパウロに近いサントアンドレーという町だった。 樽はもうしばらくサンカル
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(191)
初めの晩、家族をジャカランダのテーブルの周りに呼び「上り口説」を沖縄弁で歌った。 たびぬ´ んじ たちくわあんぬんどー しんてぃくわぁんぬんふし うぅがいでぃ くがにしゃく とぅてぃ たちわかる
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(190)
家でポルトガル語を話すということは、長年、上の息子二人のために家まで日本語を教えに来てくれた臣道聯盟の仲間、高橋先生を断らなくてはならない。旧友にそれを知らせるのが辛かった。言い出すには断るための口
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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(189)
両親にそのことを朝市で会ったとき、話したほうがいいと思っていた。その機会がきて、「お宅の息子さんの成績はとてもいいのですが、ポルトガル語を少し直したほうがいいと思います。町での生活になれるのに障害と