連載小説
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(126)
それは毎日、果たさなければならない義務だった。いや、毎日ではなかったかもしれないが、子どもたちは懸命にその義務を果たした。日曜日は、楽しみの日だ。学校にいかなくてもいいからだ。両親が朝市に行く日でも
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(125)
また、もう一方の西部攻撃隊はニューギニア島の南東に向かった。そこは2年ほど前、珊瑚海、ガダルカナル戦で日本軍がアメリカ軍を破ったところだ。アメリカ海軍はギルバート諸島の西から南東‐北西に進路をとり迅
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(124)
しかし、日本が航空母艦からの長距離攻撃ができなくなったことで、アメリカは陸、海、空統の統一された作戦をはじめ、「島から島へ」というアメリカ軍の新たな戦略をとった。目的はその地を取り返すことではなく、
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(123)
二人は薬局できちんとした手当をうけさせようとネナをかかえ、町へ走った。だが、薬局の者でさえどうにも手に負えない状態で、すぐにサンタカーザへ向った。結局、簡単な手術を受けなければならなくなった。指を切
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(122)
ネナは自分の立場を受け入れていた。まだ6歳だったばかりでなく、たとえ反発しようと、どうすればいいのか分らず、ただ、自分の与えられた立場に従うしかなかったのだ。すでに学校に通ってはいたが、体が小さく、
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(121)
正輝、房子夫婦には数ヵ月前の悲しい事件のあと、ごくあたりまえの家族に戻ったように映った。だが、両親にとってはあたりまえのことだが、息子のひとりにとってはあたりまえではなかった。次男のアキミツは、長男
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(120)
しかし、ドイツ、イタリア、日本からの移民を取り仕切るには警官の数がたりなかった。日本人のなかには自分の家にラジオを持っていて、ラジオ東京の番組を受信できる者がいた。それを通じて、アジアにおける軍事行
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(119)
ブラジル人やヨーロッパ系の移民が正輝や日本移民に使う「ジャポン」というよび方が、今までより政治的差別語としての意味あいを増してきた。わざと日本移民の発音をまねた「ジャポン」といういい方が皮肉、軽視、
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(118)
ヨーロッパ、アジアにおける戦争の進展、ブラジル政府の国粋主義強化は移民の生活を根本的にゆるがした。新しいブラジルへの移住の道は閉ざされたのだ。1941年8月13日、ブエノスアイレス丸がサントス港に錨
-
臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(117)
この独特の味は沖縄出身者以外には奇妙な食べ物と思われたが、ウチマンチュには特別な食べ物で、みんなに好まれた。食べるときはまるで儀式でも行うようにうやうやしく、感謝や賛美の言葉を交わした。それ以前に火