連載小説
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(8)
意外なことに、守屋の言葉は嘘ではなく、その女は20代半ば過ぎのラテン系の美人だった。肩まで伸びた栗色の髪、くっきりとした瞳、いつも微笑みを浮かべているような唇、外人にしては小柄で細身だが出るべきとこ
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(7)
【第4話】 最愛の両親を亡くして精神的にダメージを受けた上に、このまま商売を続けると自分の身も危ないと感じたリカルドは、祖父の代からの店をたたむ決心をした。幸い、堅実な経営をしてきたおかげで一家に
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(6)
「両親は忙しかったですが、いつも僕を可愛がってくれました。店を閉めた後は、いつも三人一緒に夕食をとり、疲れていてもその日の出来事や相談事を聞いてくれました。日曜日の午後は、日本語を教えてくれたり、公園
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(5)
「何かの書類?」「ペドロという男の子の出生証明書のコピーです。サンパウロ市の公証役場が発行していますが、オリジナルはどこにあるか分かりません。この子は、3年前にサンパウロ市内の病院で生まれています。母
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(4)
涙ぐむリカルドには申しわけないが、思い出したことを聞いてみた。「奥さんは麻薬が原因で死んだとか?」「信じられませんが、彼女自身が麻薬をもっていたらしくて、僕が東京にいる間に、警察は群馬の僕らのアパー
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(3)
【第2話】 9月最後の日曜日、ある日系人が、事前のアポもなく事務所に現れた。 彼のように外国から出稼ぎに来ている連中の多くは、日曜日しか時間がとれないようだ。私は、毎日が日曜日のような生活をしてい
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(2)
私生活のほうは、素性の知れない私を理解し受け入れてくれた女性とめぐり会って結婚し、ようやく家族としての幸せを手に入れた。南米では、日本人移民(私)とヨーロッパ系移民(妻)の間にできた息子にも、自動的
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「ある日曜日」(Um Dia de Domingo)=エマヌエル賛徒(Emanuel Santo)=(1)
【第1話 プロローグ】 《ブラジル女性に薬の魔手》 警視庁によれば、9月4日・日曜日の深夜、東京・六本木の麻布警察署付近の路上で外国人女性がうつぶせに倒れているのを、通報を受けて駆けつけた救急隊員が発
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チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(12)
周りに誰もいないベンチに腰かけて勢い話は本のことになる。何と言っても今日の掘り出し物は「金子薫園の短歌の作り方」と私が言えば、いや 谷崎潤一郎の「文章読本」もいい、と品次君が言う。 ウニオン区の青年
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チエテ移住地の思い出=藤田 朝壽=(11)
常日頃欲しいと思っていた本がある。 「万葉集評釈 江戸時代和歌評釈」「子規・節・左千夫の文学」佐々木信綱の「豊旗雲」谷崎潤一郎の「文章読本」「朗吟名詩選」福沢諭吉の「人生読本」バルザックの「この心の