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ガウショ物語=シモンエス・ロッペス・ネット著(監修・柴門明子、翻訳サークル・アイリス)

ガウショ物語=(46)=ファラッポスの決闘=《終》=とどめを刺すなら今だ!

 歩いていくと、遥か向うから川岸を降りてくる人影が見え、わしの後ろの方からは別の、もう一人がやって来るのに気がついた。 ゆっくりと、まるで気楽な散歩をしているみたいに、ふたりは近づいてきた。 ああ、言い忘れていたが、二頭の腹帯の下には、それぞれ剣が差してあった。 気をつけて見ると二本の剣はそっくり同じだった。鍔は握った手にかぶさ ...

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ガウショ物語=(45)=ファラッポスの決闘=《2》=多くの血が流されたことか

 荷車の一団は広場の真ん中に止まった。ただちに案内役の男が進み出て、通行証やその他の書類を差し出した。男が言うには、やってきたのはある未亡人で、政府に宛てた書簡を持参した。捕らえられて家畜にされた牛や馬について、そしてその損害云々、といった内容の訴えが、延々と、もつれた縄よろしく書かれていたそうだ…… この出来事は、たちまちわし ...

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ガウショ物語=(44)=ファラッポスの決闘=《1》=祖国のために生き、死ぬ

 わしがベント・ゴンサルヴェス将軍の伝令だったことは何度も話したな――もちろん、証拠だってかあるさ。 これから話すことは一八四二年の終わりごろ、アレグレッテで始まって、それから二年の後、国境のサンタナに近いサランジの辺りまで広がって、二月二七日に終った戦の時に起こったことだ。 ことの起こりはこんな具合だった。まあ、お前さんによく ...

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ガウショ物語=(43)=骨投げ賭博=《2》=刃物一つで二つの心臓貫く

 「月毛と?」 「月毛とラリカだ!その通りさ。やつにはもう飽きあきしているところだ!……」 「なら、受けて立つ。」 見物人の中には目と目を交わし、ささやきあう者もいた。彼等にはこのガウショが運に見放されていることが分かっていた。すでにかね金も馬も革の長靴も、銀の太い鎖がついた平ムチまで、全てを失っていたのだ。そして、今度は、相手 ...

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ガウショ物語=(42)=骨投げ賭博=《1》=死者まで出す賭けとは

 「実をいうと、わしは自分の女を骨投げの賭博に賭けるのを見たことがある。その事で死者まで出たのさ……全くすごい賭けだった!」 街道に沿った村のはずれ、数本のイチジク の老木が枝を広げて陰を作っていた。その木陰にアハニョンと言うちっぽけな居酒屋があった。つぶれかかった店だが主人は抜け目のないヤツで、わしの見るところ脱走兵らしく、ス ...

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ガウショ物語=(41)=密輸に生きた男=《3》=無抵抗の頭領に一斉射撃

 その悪事の先頭にいたのがジャンゴ・ジョルジだった。若いときからだ、その死に至るまでな。わしはずっと見てきたんだ。 さっき話したように、婚礼の前日、ジャンゴ・ジョルジは娘の嫁入り衣装を取りに出かけて行った。 昼が過ぎ、夜が過ぎた。 次の日、つまり、婚礼の日、昼が過ぎても何の音沙汰もなかった。 家には大勢の招待客が集まっていた。村 ...

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ガウショ物語=(40)=密輸に生きた男=《2》=警官一握り、国境開けっ広げ

 ここリオ・グランデ・ド・スールを支配していたのは陸軍大将と呼ばれる男で、開拓地は与えたが、その後の生活は何も保障しなかった……。 お前さん、それがどう言うことか、今度中尉のポストについたら、身を持っていろいろと体験するから解るようになるだろう。 あのころ、火薬はわれらの国王陛下のもので、許可を得た何人かの大物ガウショだけしか火 ...

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ガウショ物語=(39)=密輸に生きた男=《1》=強いものが支配する時代

 その痩せた体はすで九〇歳に手が届こうとしていた。だが、イビロカイ川のほとりを拠点とする密輸クループの頭領だったジャンゴ・ジョルジの度胸はいまだに衰えを知らなかった。 この向こう見ずなガウショは、生涯ずっと国境の広野を行き来して過ごした。真昼の日差しの下を、青白い月の光りの中を、夜の闇の中を、明け方の立ち込める霧の中を……。 豪 ...

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ガウショ物語=(38)=勝利の天使=《2》=彼の名はベント・ゴンサルヴェス

 わしは仔牛のあばら肋骨に食いついたダニよろしく代父にぴったりくっ付いていた。代父が行くところについて行き、通りすぎればわしも通りすぎ、攻撃すれば攻撃し、退却すればわしもそうした。 そんな騒ぎの最中に、わしのポンチョはときどき風で膨れあがり、灰色の旗が風で空に舞うように、バタバタと翻った。 ベント・ゴンサルヴェス少佐は味方が団結 ...

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ガウショ物語=(37)=勝利の天使=《1》=まさか! 突然の夜襲

 あれはイツザインゴーの戦の後のことだった。サン・ガブリエルのずっと先の、イニャチウン湿原の向かい側にあるロザリオの渡しでのことだ。お前さん、イニャチウンて知らないのかい? 蚊のことさ。うまい名を付けたもんだよ。 イニャチウン湿原、いやー参った! 空中に舞う蚊が煙のようだったな! わしはまだガキでせいぜい一〇歳位だっただろうな。 ...

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