子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=45
さあ大変。佛教会の会場を整える準備が始まった。戦時中、使用禁止されていただけ埃がひどかったが、一言も不平を言わず、黙々と働いてくれたそうだ。皆家では息子や娘に指図しながら、自分は動きもしないだろうと
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=44
商売に関しては、こちらは素人で何も知らず、非常に助かった。土地の売買は、地権書と抵当になっているかを調べるだけで済んだが、商売の複雑さを改めて痛感した。やっとの思いで開店になったのが、商談を始めてか
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=43
もし店を買ったとしたら、兄弟4人と今の店員2人で当分はやっていけそうだ。山口さんの熱心な記帳には圧倒された。閉店間際になっても終えず、残りは明日に回すようになった。そこで近付きのための一夕として、商
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=42
しかし、外の人もやっていることだし、自分たちにも出来ぬはずはない。いかなる商売にしろ、人様に劣るはずはないとの自負はあった。 「バールをやったら。今売り物になっているし、素人にだってすぐできる」。そ
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=41
この調査の結果に数多くの知識人が関心を示し、当時の州統領、アデマール・デ・バロス閣下が「収監されている大多数の日本人の身を案じられている」と知ると、天を仰いで「事態の好転も近い!」と同志と共に喜び合
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=40
何事に対しても忍耐を第一とし、同じ日本人として相争うことなく、国体を信じ、皇室を尊び、「敗戦認識派」を無視し日本の勝利を信じ、結束を固める。思想の善導を第一義とする従来の研究会はもっと飛躍すべきだと
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=39
その話が伝わり始めた頃、マリリア、オズヴァルド・クルス、トゥッパン、バストス方面で養蚕小家の焼打ちの噂が、口から口へと広がり、真偽の程はわからないが、次から次へと伝わる噂に人々は脅え、抑えることはで
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=38
10時ごろから堪忍の緒も切れ、皆で鉄格子を叩いて大騒ぎを起こし、警察の不法に抗議するが、ただ「静かにしろ」と怒鳴り返されるばかり。そうした騒ぎの最中に、捕まえられずに残った者たちの機転によって差し向
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=37
一例として、認識派の者には営農資金を融資するが、そうでなければ長年の組合員であっても何とか理由をつけて融資を断るという、一種の踏み絵を強いるという悪辣極まる手段で認識派に引き込もうとしているという。
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=36
そんなある日、あわただしい蹄の音がコーヒー園に響いた。ただ事ではなさそうだ。「中野さん、中野さん!」と叫ぶ声と同時に、一人の青年が全身汗と埃にまみれ馬から飛び降りると、おやじに縋り、あまりの疲労に声