さあ大変。佛教会の会場を整える準備が始まった。戦時中、使用禁止されていただけ埃がひどかったが、一言も不平を言わず、黙々と働いてくれたそうだ。皆家では息子や娘に指図しながら、自分は動きもしないだろうという中老過ぎの者たちだったが、佛様をお仰ぎできる嬉しさに、脇目もふらず、三日がかりの腰弁当で見違えるように場所を整え、床もピカピカ ...
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=44
商売に関しては、こちらは素人で何も知らず、非常に助かった。土地の売買は、地権書と抵当になっているかを調べるだけで済んだが、商売の複雑さを改めて痛感した。やっとの思いで開店になったのが、商談を始めてから15日後の事だった。 人として生まれて28年の歳月が過ぎ、今までの15年間余りを鍬に親しんで一生鍬の道を歩んでいくつもりでいたの ...
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もし店を買ったとしたら、兄弟4人と今の店員2人で当分はやっていけそうだ。山口さんの熱心な記帳には圧倒された。閉店間際になっても終えず、残りは明日に回すようになった。そこで近付きのための一夕として、商談が纏ります様にとセーミの奢りで御馳走になったが、こっちは田舎者。メーザの上に並べられた1ダースのビールを見てびっくり。 田舎の家 ...
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しかし、外の人もやっていることだし、自分たちにも出来ぬはずはない。いかなる商売にしろ、人様に劣るはずはないとの自負はあった。 「バールをやったら。今売り物になっているし、素人にだってすぐできる」。そう盛んに進める人もいたが、「ピンガを喰らってぐずる男達」の相手をする気はない。それに商そのものが小さく、家みたいな大家族を養うには ...
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この調査の結果に数多くの知識人が関心を示し、当時の州統領、アデマール・デ・バロス閣下が「収監されている大多数の日本人の身を案じられている」と知ると、天を仰いで「事態の好転も近い!」と同志と共に喜び合った。そして、その日が一日も早からん事を祈るのであった。 旬日ならずして事態は好転し、続々と収監を解かれた大勢の同胞が無事帰宅を待 ...
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何事に対しても忍耐を第一とし、同じ日本人として相争うことなく、国体を信じ、皇室を尊び、「敗戦認識派」を無視し日本の勝利を信じ、結束を固める。思想の善導を第一義とする従来の研究会はもっと飛躍すべきだとの説に従い、その具体的な説明には今後の大きな課題としてお互いに勉強し、日本人としての自覚のもと、今の自分を「これで良いのか」と見つ ...
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その話が伝わり始めた頃、マリリア、オズヴァルド・クルス、トゥッパン、バストス方面で養蚕小家の焼打ちの噂が、口から口へと広がり、真偽の程はわからないが、次から次へと伝わる噂に人々は脅え、抑えることはできなかった。だが、ここドゥアルチーナでは、勝ち組は心を一つにして警戒に当たっている故か、今まで皆無事だった。 今後もそう続けてほし ...
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10時ごろから堪忍の緒も切れ、皆で鉄格子を叩いて大騒ぎを起こし、警察の不法に抗議するが、ただ「静かにしろ」と怒鳴り返されるばかり。そうした騒ぎの最中に、捕まえられずに残った者たちの機転によって差し向けられた弁護士が来た。警察側も不法には抗言出来ず、不当を認め、即出所命令を下し、一同安堵して帰って来た。すると大勢の人たちが詰め掛 ...
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一例として、認識派の者には営農資金を融資するが、そうでなければ長年の組合員であっても何とか理由をつけて融資を断るという、一種の踏み絵を強いるという悪辣極まる手段で認識派に引き込もうとしているという。 あるいは文教普及会に就職が決まっていたのにもかかわらず、認識派に反対していた為、何とか理由をつけられ、就職を断られたという類の事 ...
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そんなある日、あわただしい蹄の音がコーヒー園に響いた。ただ事ではなさそうだ。「中野さん、中野さん!」と叫ぶ声と同時に、一人の青年が全身汗と埃にまみれ馬から飛び降りると、おやじに縋り、あまりの疲労に声も出ず、しばらくゼイゼイと吐く息も苦しげだった。しばらくしてようやく一口の水をすするように飲み、大きい吐息をつくと涙を流しながら語 ...
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