さあ着いた。此処がドゥアルチーナ、我が家の再出発点だ。少年ながらも夢はある。家も仕事も全てが新しいブラジルでの生活が始まるのだと思うと何となく勇気がわいてくる。 駅に着くと三坂耕地から貨物自動車で、耕主の甥の義男さんという青年と監督さんの二人で出迎えに来て下さった。同じ汽車で来た荷物を積み込み、同じ荷台に乗り込んでドゥアルチー ...
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連載小説=子供移民の半生記=家族みんなで分かちあった=異郷の地での苦しみと喜び=中野文雄=2
窓ガラスに触ってみたら、あるはずのガラスがない。道理で煙が入ってくるはずだ。大半のガラスは壊れていてなかった。わざわざ出迎えに来てくれた大先輩の大塚さんによれば、ブラジルでは高い所から悪ガキ共が汽車を目掛けて石を投げ、窓ガラスを壊してしまうのだそうで、汽車の窓は大半が割れていた。 また、日本の汽車とちがって、ブラジルでは薪を焚 ...
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第一節 運命 航海最後の夜――。もう暫くしたらブラジルの大陸が見えるだろうという人々の声が聞こえる。2カ月近くの長く単調な航海にうんざりしていた上に、目的地ブラジルを見たいという好奇心。それにブラジルでは真夏。船室からのがれ甲板で涼風に吹かれたいとの思いは、誰しも同じ。いつもなら子供が甲板に出る事は禁じられているのだが、明日はサ ...
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