自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(24)
そして「今日はおばさんいるかな」と文雄君が家の中を覗いている。すると返事もしないで顔を出した娘がいきなり、「まあ文ちゃん、今日はなにごと?」「ちょっと通りかかったもんで、声を掛けてみた。おばさんは?
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(23)
その翌日は日曜日であった。本日は非番になっていたので昨夜の分まで寝ていようと、思っていた矢先、朝早く玄関のチャイムが鳴りだした(注=この時分には新築の場長住宅に入居していた)。 眼をこすりこすり、窓
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(22)
矢野養鶏部長さんから「今後は千年太郎君によろしく頼む」と、一度だけ連絡が来て、その後は業務連絡だけ。後は木村場長着任以前に逆戻り、何とも悠長な時代では有りました。 ところで彼の生まれついての信念は「
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(21)
その土曜日が来た。午後二時、場長から「千年君、これから木村君とこに行くぞ」と迎いに来た。お断りする理由もなく、木村場長の強(し)いてのお誘いである。木村さんとも大変気の合う人で、一度、大塚氏に逢って
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(20)
矢野養鶏部長が「千年君どうかね、良いところだろう」と訊いた。「ハイ驚きました。随分広いですね。しかし、これだけ広けりゃ、気持ちが良いですね。でも、ちと気になりましたが、あのマモンは(果物)は切っても
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(19)
入ってまずビールを注文。「何かおつまみは」とガルソンが聞く。奥地のフランゴ(若鶏)のから揚げを注文した。昼間の余りにも美味しい味に釣られたのである。でも、出てきたから揚げは、鶏は鶏でも鶏の味が違う。
-
日本移民108周年記念=囚人の署名 平リカルド著 (翻訳)栗原章子=(7)
そんなわけで父親と「兄さん」の仲はますます険悪なものとなっていった。いつも言い争いが絶えなかった。兵譽は町に出て、現状に不満をもつ人々の仲間入りをするようになっていた。 「笠戸丸」から二〇年以上も過
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(18)
どうやら朝のコーヒー(軽食)なのだ。何とテーブルの上には、大きなスイカとかマモン(マンゴ)とか、色ずいたバナナに、自家製らしいパンが山と出してある。果物、パンはさすがブラジル、上手に出来ていた。しか
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(17)
太郎は「おじさんたち、井出利葉さんですか」と尋ねた。「そうじゃが何か」「ああ、良かった。僕はおじさんを探して、サンパウロから来ました。井出利葉さんは「ふうーん、こんな所に用のあるようなもんにゃ見えん
-
自伝小説=月のかけら=筑紫 橘郎=(16)
そして1960年、いよいよ独立の機運到来では有ったが、行方家の家庭事情、経済事情で、青年達にまで支援援助は至難である。よって「それぞれのプラン計画、望みによって、身の進路を考えてもらいたい」と行方正