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短歌

ニッケイ歌壇(525)=上妻博彦 選

サンパウロ  武地志津

チッチッチチと微かに啼くは何鳥や炊事の手を止め耳澄ませ聞く
洗濯場そっと覗けば小燕のあらぬ場所より不意に飛び立つ
吾が影に怯えしならむ小燕の狭き空間ぱたぱたと飛ぶ
久々に迷い入り来し小燕のいじらしきさま暫し見て佇つ
小燕の囀りやめば片隅に親を恋うらむじっと動かず

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ニッケイ歌壇(524)=上妻博彦 選

サンパウロ  遠藤勇

夕暮れて雨音激し雷しきり待ちいし豪雨爽快に降る
雨上がり初夏の朝風心地良し両手差し上げ深く息する
夏の陽は強い光を地に注ぐ成長の夏躍動の夏
紺碧の大空翔ける大型機額から抜けた絵のように行く
夏雲は白く大きな造形美陽光浴びて輝いており

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ニッケイ歌壇(523)=上妻博彦 選

サンパウロ      梅崎 嘉明 大鳥居くぐればピニアル植民地広き会館太鼓の響く 誘はれて出で来しピニアル別名は福井村とかデコポン産地 福井村と記せる法被で商える老若男女さながら日本 一つのみ食べても良しと許されてデコポン狩りに人はにぎわう デコポンと誰が名付けしや稚拙とも愛嬌とも言われ馴染める   「評」『実相観入』とは、茂吉 ...

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ニッケイ歌壇(522)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎嘉明

鉄人と名のある大人(うし)は以外なる好紳士にて吾が名を呼べり
面識のなき吾の名覚えいる知識豊かなる大人(うし)とは知れり
緑こき庭園にして広大な建物のあり図書館と聞く
管理人のなき図書館にて盗む者あるとも良しと寛大なる弁
歌会に閲覧室の借用を乞えば気安く名刺くださる

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ニッケイ歌壇(521)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎嘉明

基地移転くり返し政府に訴える翁長知事の執念は良し
基地のため繰り返さるる暴行に県民の怒り思いやるべし
よそくにに寄与融資の金なれば沖縄基地の移転につくせ
だめ押しの政治をさけて県民の意を汲み平和な国つくるべし
裁判は県民を窮地におとしめる判決なすな博愛を知れ

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ニッケイ歌壇(520)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎嘉明

リオ五輪不安の多く言われしが開会式は世界が賞賛
ブラジルの知能あつめし企画とか終始見惚れし夜の更くるまで
日本式におじぎをなして涙する柔道ラファエーラの動作を讃う
ロンドンの五輪で敗れしラファエーラの執念よろし金賞得たり
黒人に日系東洋系の賞多く日毎楽しくテレビに向う

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ニッケイ歌壇(519)=上妻博彦 選

      サンパウロ      武地 志津軽量も気迫で乗り切る日馬富士巨体逸ノ城下(くだ)す上手投げ白鵬の手が顔面を被いたる瞬間豪栄道の腰砕け一瞬を松鳳山の変化にて又も不覚を取りし稀勢ノ里両手上げ怯える様の「勢」に白鵬忽(たちま)ち体勢崩れる日馬富士の優勝称え喜びを分かち合いたる人は今亡し「評」千代の富士が大相撲界で「ウルフ」 ...

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ニッケイ歌壇(518)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎嘉明

ブラジルへ移民調査の細川氏わが陋屋(ろうおく)を訪ねてくれし
移住時を語れば胸のつまりくる我に周平氏はビデオを向ける
幅広く取材重ぬる細川氏われにまつわる記事載せくれし
吾が歌碑と共に撮りたるうつしえを手紙にそえて贈りたまいし
わが歌碑とふた分けし石ふるさとの河川工事の由来記と建つ

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ニッケイ歌壇(517)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎嘉明

自動車の自爆テロのたゆるなく中東の和平いつの日にくる
戦いの熄むなき国の難民は行方も知らずあわれさまよう
国のためその身ささぐはよけれども残りし民の苦衷はつきず
国のため生命捨つれば天国で美せを得るとかイスラム伝説
かつての日日本の兵士も国のため生命ささぐを神とたたえし

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ニッケイ歌壇(516)=上妻博彦 選

アルトパラナ  白髭ちよ

楽しみが又一つ消えて行く吾が人生の日暮時かな
歌友も師も無き吾の歌の道日日の歩みを短歌に託し
テレビにて見とれる日本の桜花恋いつつ逝きし父母に見せたき
ひと度も訪日かなわず逝きし父在らばNHK視せましものを
いかばかり恋しかりしやふるさとを偲びつつ過ぎし八十路の父は
(右三首『祖国はるかに』より抄)
「評」八十六歳、その作者の親御に寄せる思いの旧作を三首、合同歌集より抄(筆者)。

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