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短歌

ニッケイ歌壇(505)=上妻博彦 選

サンパウロ  坂上美代栄

札束を吐き出すパイプ写されし汚職まみれのペトロブラスよ
大物に小者絡まりあばかれしあちらこちらに火の粉が散れる
汚職の根掘ればどこまで行くのやらニュース聞くのもほとほと厭きる

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ニッケイ歌壇(504)=上妻博彦 選

      ソロカバ       新島  新為せば成る為さねば成らぬとは申せ一首なすにも苦心惨憺五キロほどペダル踏むにも息が切れ一首詠むにも青息吐息自腹切る訳ではないがこの長雨で野菜値上りするを心配敵もさる者引っ掻くものとは誰のことあれまくれぐれ惚けなさるなよクーニャ議長の厚顔無恥には呆れるがあのしぶとさは見習うべきか  「評」 ...

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ニッケイ歌壇(503)=上妻博彦 選

サンパウロ  武田知子

家元ゆ新代表の派遣とて茶道の普及多岐にわたれば
伯栄庵せましとばかり参加せる和服はなやぐ絹ずれのして
お茶席に供する菓子も家元に学び帰伯のブラジル娘
宗旦忌偲ぶ茶会の進むうち懐石供す汗たりながら
茶懐石日本さながら今日一と日堪能せしと客笑顔にて

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ニッケイ歌壇(502)=上妻博彦 選

アルトパラナ  白髭ちよ

幾日もの闘病生活空しくて友は一人黄泉への旅に
眠る如安らかな面(おも)の美しく並み居る人等に安堵与える
のうそん誌を繰り返し読み好みしと付き添いし人吾に語れり
のうそん誌を貸して上げたき人は逝き後幾冊も本棚に眠る
葬式を待つがに雨が降り来たり心にしみいる雨だれの音

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ニッケイ歌壇(501)=上妻博彦 選

秋篠宮殿下と紀子妃殿下が、ブラジリアで連邦議会主催の日伯外交樹立120周年記念式典に参加されるため10月28日に来伯、11月8日までの間に10都市を訪問された。

サンパウロ  武田 知子

プリンスの赤い絨毯踏みしめ来、行啓ほぎて握手交はせり
すがすがしき微笑受けつつ握手せる紀子様の手の温みじんわり
広島の神楽公演紅葉狩『八岐のおろち』の神話思(も)い出づ
相席の同輩なれど二世とて説明せるをうなづきて見る
混み会うを見越し早めの墓参なり夫逝きてより早やも八年

「評」久しく潜めていた武田(宗知)作品の本領が『じんわり』と伝わって来る一連。

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ニッケイ歌壇(500)=上妻博彦 選

バウルー  小坂 正光

渡伯時に生れし末弟を伴いて八十五年の廃耕地訪う
コーヒーの樹海で栄えしノロ線の末弟生れし廃耕地訪う
生れ出て人生一と幕老いの坂今朝も洗顔ヒゲを剃るなり
夜半覚めて寝むれづ文を手になせば何時しか刻の過ぐるに気づく
朝毎にコーヒー呑みつつ老い妻と冗句まじりの会話を楽しむ

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ニッケイ歌壇(499)=上妻博彦 選

『弓場』とは、サンパウロ州ミランドポリス市にある日系コミュニティの弓場農場のこと。1935年に戦後移住者によって創立。日系人や日本人が共同生活をしながら自給自足の生活を送っている。また創立当初より「耕し、祈り、芸術する」をモットーとしており、テアトロ(劇場)もあり、恒例の年末公演では音楽や芝居、バレエなどが披露される。(写真は2014年の年末公演)

サンパウロ  武田 知子

はるばると六百キロのバスの旅春泥の中弓場の土踏み
稚鴎師の百歳祝いにボーロ切る姿は凛々とまぶしかりけり
弓場の里稚鴎師迎え百歳も六歳の子もなごやかな句座
散策に果てなく続く鈴成りの垂れしマンガは未だ熟れかね
ふくろうも蛙も鳴きてカナブンの飛び交う弓場は田舎さながら

「評」四、五首目の様なところを散策して、心落ちついてこそ、まろやかな歌も生れると言うもの、稚鴎(ちおう)氏を囲んでの句会も、また楽しからんや。

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ニッケイ歌壇 (498)=上妻博彦 選

サンパウロ  梅崎 嘉明

電柱を巻きてサンジュオンの蔓は伸び天に向いて紅花をささぐ
ああ今日も平凡にして一日過ぐ昨日と同じ食事を並べ
先妻を亡くし再婚の妻も逝き吾に永かり昭和のみ代は
落ちこぼれ短歌など詠みて詮(せん)もなし妻はあの世で笑っておらむ
実際の私の日々は何なのか優柔不断の枯落葉なる

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ニッケイ歌壇 (497)=上妻博彦 選

サンパウロで開催される県人会連合会主催の日本祭では、各県人会が郷土食を販売するコーナーが大人気。日本人、日系人だけでなく非日系人も競うように求め、ブース前には行列ができる。

サンパウロ  武地 志津

郷里より届きたる本「伊勢神宮」開けば爽快の気われを包みぬ
参道の砂利踏む音のさくさくと正に聞こゆるごとき写真に
幼時より思い出深い五十鈴川朝もやけぶる静寂の中
シンビジウムの鉢携えて来し友が娘(こ)の佛前に香薫き呉るる
同じ頃娘(こ)を失ないし友とわれ折々にして遺影に語る

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ニッケイ歌壇 (496)=上妻博彦 選

サント・アンドレー 宮城あきら

沖縄のゆくえ如何にか明日暗き辺野古の海に招かざる基地
全国土の六パーセントに過ぎさりしわが故郷に基地がひしめく
国防はその地に住めるはらからの賛意なければ成り立ち難くも

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