短歌
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ニッケイ歌壇 (495)=上妻博彦 選
サンパウロ 水野 昌之 昼寝時に限って電話で起こされる「間違い、ご免」という人からだ誰からか電話きそうな気配する休日つづくひとりの真昼裾分けのケーキのお礼の電話受く声の高さで喜び
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ニッケイ歌壇 (494)=上妻博彦 選
サンパウロ 相部 聖花 過去は今過去になりたり未来世は未だ来たらず今を生きるのみ夫の沸かすコーヒーの香の二階まで立ちのぼり来て今日が始まるやわらかき冬日を浴びてくれないのつつじ咲
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ニッケイ歌壇 (493)=上妻博彦 選
サント・アンドレー 宮城あきら この年も古本市に通いきて安き良き書を求め楽しむ古りし書の輝く文字懐かしき『啄木全集』買いて帰るも手に取ればたった二ヘアイスの哲学書済まないような握り出しの
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ニッケイ歌壇 (492)=上妻博彦 選
サンパウロ 武地 志津 強風に煽られ落ちて傷みたる小鉢の仙人掌生気が失せる色褪せし蟹仙人掌を朝に夕に透かし眺めつ一縷の望みちんまりと蟹仙人掌の枝(え)の先に今朝みつけたり四つの蕾
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ニッケイ歌壇 (491)=上妻博彦 選
サンパウロ 梅崎 嘉明 高千穂に八紘一宇の塔たつと聞きし日ありきいまはまぼろし軍籍は持てど戦爭を知らぬ父日本は敗けぬと言いつつ逝けり大本営のラジオを聴きし友人は馳せきて日本の大勝
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ニッケイ歌壇 (490)=上妻博彦 選
グワルーリョス 長井エミ子 父と子の世代隔てた葛藤の部屋にひそりと一輪のバラもう先の見えているネと言う君の髭剃らぬ顔いと愛(かな)しけれもう三日君の不機嫌続きたるへのへのもへので踊
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ニッケイ歌壇 (489)=上妻博彦 選
サンジョゼドスピンニャイス 梶田 きよ 第七まであると聞きたるわが母校朱雀第三尋常高等小学校はなつかしき京都の人の歌よみてふと目につきし円山公園「お出でやす」「お帰りやす」の京言葉うかべてひと
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ニッケイ歌壇 (488)=上妻博彦 選
モンテ・カルメロ 興梠 太平 知人より送って来たる自分史にそんな歳かと気づいたあの日八十まで生かされて来て六人の孫もすこやか感謝の気持久しぶり畳・布団に横たわりしみじみ思う昔の事を仏
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ニッケイ歌壇(487)=上妻博彦 選
サンパウロ 武地 志津 それぞれに個性目を引く犬達の主(あるじ)と共に朝のウォーキング一心に女主人の後を従く桃色リボンの仔犬いじらし老齢の飼い主が押す手車に躾よき幼のごと乗る仔
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ニッケイ歌壇(486)=上妻博彦 選
サンパウロ 武地 志津 白鵬と真っ向勝負の照富士堂々の寄りに金星上げる逸ノ城、照富士との大熱戦沸きに沸きたり満員の客白鵬は己が記録に捉われて変化紛いで稀勢里下ろす一瞬を静もる満