サンパウロ 水野 昌之昼寝時に限って電話で起こされる「間違い、ご免」という人からだ誰からか電話きそうな気配する休日つづくひとりの真昼裾分けのケーキのお礼の電話受く声の高さで喜びを知る新しき恋の話も就職も孫ともなればいつも電話なりじっくりと女を口説く要領で商談まとめる友の長電話 「評」こうした作品に接すると ...
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ニッケイ歌壇 (494)=上妻博彦 選
サンパウロ 相部 聖花 過去は今過去になりたり未来世は未だ来たらず今を生きるのみ夫の沸かすコーヒーの香の二階まで立ちのぼり来て今日が始まるやわらかき冬日を浴びてくれないのつつじ咲きつぎ庭は明かるむ三か月咲き通したるシンビジウム色おとろえず鉢の縁に立つ今期三度開花を仰ぐイッペーも天候異変に迷いいるらし 「 ...
続きを読む »ニッケイ歌壇 (493)=上妻博彦 選
サント・アンドレー 宮城あきら この年も古本市に通いきて安き良き書を求め楽しむ古りし書の輝く文字懐かしき『啄木全集』買いて帰るも手に取ればたった二ヘアイスの哲学書済まないような握り出しの心地開き見れば南樹の署名滲み古りて時の移りを痛く思いきコロニアの知性ざわめく古本市秋は卯月の風物の詩(うた) 「評」まさしく風 ...
続きを読む »ニッケイ歌壇 (492)=上妻博彦 選
サンパウロ 武地 志津 強風に煽られ落ちて傷みたる小鉢の仙人掌生気が失せる色褪せし蟹仙人掌を朝に夕に透かし眺めつ一縷の望みちんまりと蟹仙人掌の枝(え)の先に今朝みつけたり四つの蕾ほんのりと色滲ませつ膨らみし蕾は開くオレンジ色に垂れ下る枝(え)の先に花もたげ咲く蟹仙人掌の花びらやさし 「評」あの激しい土俵 ...
続きを読む »ニッケイ歌壇 (491)=上妻博彦 選
サンパウロ 梅崎 嘉明 高千穂に八紘一宇の塔たつと聞きし日ありきいまはまぼろし軍籍は持てど戦爭を知らぬ父日本は敗けぬと言いつつ逝けり大本営のラジオを聴きし友人は馳せきて日本の大勝を告ぐ飛行機を搭載可能の潜水艦建造せしとか戦わず消ゆ黄金藤の花過ぎ葉陰に数多見ゆ莢実(さやみ)は時代にかかわらず垂る 「評」確 ...
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グワルーリョス 長井エミ子 父と子の世代隔てた葛藤の部屋にひそりと一輪のバラもう先の見えているネと言う君の髭剃らぬ顔いと愛(かな)しけれもう三日君の不機嫌続きたるへのへのもへので踊りだそうか秋深し国道駆ける若者のサイクリングの背中膨らみ乾涸びた人住む国よ撒水車地球の上を駆けてくれぬか 「評」これまでずっと ...
続きを読む »ニッケイ歌壇 (489)=上妻博彦 選
サンジョゼドスピンニャイス 梶田 きよ 第七まであると聞きたるわが母校朱雀第三尋常高等小学校はなつかしき京都の人の歌よみてふと目につきし円山公園「お出でやす」「お帰りやす」の京言葉うかべてひとり写真ながめる十二年住みたるのみの京言葉使いはせねど忘れはしないいつ死んでも悔などあらず朱雀校にて学びし記憶心に秘めて 「評」四 ...
続きを読む »ニッケイ歌壇 (488)=上妻博彦 選
モンテ・カルメロ 興梠 太平 知人より送って来たる自分史にそんな歳かと気づいたあの日八十まで生かされて来て六人の孫もすこやか感謝の気持久しぶり畳・布団に横たわりしみじみ思う昔の事を仏前に理解出来ずも唱うれば般若心経はささえとなりぬ皇后の御歌(みうた)を拝し言の葉の奥床しさに魅了されたり 「評」この五首の作品 ...
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サンパウロ 武地 志津 それぞれに個性目を引く犬達の主(あるじ)と共に朝のウォーキング一心に女主人の後を従く桃色リボンの仔犬いじらし老齢の飼い主が押す手車に躾よき幼のごと乗る仔犬朝なさな園の小鳥に餌を運ぶ男寡黙にせっせと通う半切りのマモンが並ぶ台の上多くの小鳥はや来て啄む 「評」その内に犬が、主になる ...
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サンパウロ 武地 志津 白鵬と真っ向勝負の照富士堂々の寄りに金星上げる逸ノ城、照富士との大熱戦沸きに沸きたり満員の客白鵬は己が記録に捉われて変化紛いで稀勢里下ろす一瞬を静もる満員会場の客ら失望の無言の抗議舞の海のつね明白な解説に耳傾けて心安まる 「評」毎場所の短歌による相撲解説、この様に三十一文字に詠 ...
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