宮嶋はブラジル国内でも日本移民排斥の動きが始まっていると警告し、《北米の例にならって二三の衛生家は日本人には寄生虫がある。こういう人間は好ましくないという声を高めてきたのであります。それゆえに日本人の十二指腸虫をどうして除いて宜しいか、ブラジルにおいても日本人の寄生虫病に罹っている者の割合が多いというので、移民の衛生状態を調べ ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で
日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(8)=マラリア権威が移民実情調査
移民開始から10年目の1918年、ブラジル移民組合の要請により、北里研究所の寄生虫学の権威・宮嶋幹之助がブラジルに派遣された。日本人研究者初の現地調査といわれる。専門はツツガムシ、マラリア、日本住血吸虫、ワイル病など。移民の公衆衛生指導をし、レジストロを始めとする日本人集団地の調査記録を残している。 宮嶋は、北里研究所から持 ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(7)=「予告された悲劇」マラリア
日本の国立感染症研究所サイト(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/519-malaria.html)にも《熱帯熱マラリアでは、早期に適切な対応をしないと、短期間で重症化し死に至ることがある》と説明されている。今現在も危険な感染症だ。 さらに《マラリアは100カ国余りで ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(6)=各地で起きたマラリア惨禍
元アマゾン移民の小野正さんの自分史『アマゾンの少年の追憶』は、一つ一つの場面が淡々と描かれているが、その内容は実に過酷な現実の連続だった。 前節で紹介した通り、1933年7月16日の深夜に「突然うーんと言う重苦しい呻き声」をたてた弟の哲夫が亡くなったのに続き、翌34年4月2日には兄の利雄(21歳)、その年の瀬の12月2日には ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(5)=自分史に残された黒水病の傷跡
元アマゾン移民の小野正さんの自分史『アマゾンの少年の追憶』(https://www.nikkeyshimbun.jp/2004/amazon-2.html)には、アカラ植民地入植初期のこのようなシーンが描かれている。 1930年、宮城県岩沼市から家族でアマゾンに入植してわずか3年目。希望に燃えたそんな時期に、日本では起きえな ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(4)=悪性マラリアの巣窟アマゾン
本紙4月2日付に「コロナ災禍 連帯メッセージリレー」第1回目として掲載された《今は耐え、いずれ一気に行動へ!》と題するブラジル日本都道府県人会連合会・山田康夫会長(当時)の寄稿文には、こんな一節があった。 《過去を振り返れば、日系社会はこの新型コロナウイルスの問題以上の多くの困難を乗り越え、今日に至っております。 こういっ ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(3)=移民船が感染ルートに?
1918年にブラジルにスペイン風邪を持ち込んだのは、英国を出航した客船デメララ(Demerara)の乗客だった。現在ではウイルス患者の主要な移動手段は飛行機になっているが、今も客船経由の感染は健在だ。 新型コロナウイルスでは、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が横浜港に2月最初に寄港して話題になった。3月 ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(2)=大統領もスペイン風邪犠牲者に
スペイン風邪の時、ブラジルの病死者で一番有名なのは、1918年の大統領選挙で当選したロドリゲス・アルヴェスだ。11月から就任するはずだったが、病のために就任できなくなり、翌年1月に亡くなった。 大統領代行を務めたデルフィン・モレイラは、伯国史上初の大統領代行になった。 アウヴェスは1902~06年まで第5代大統領になってお ...
続きを読む »日本移民と感染症との戦い=世界最大の日本人無医村で(1)=上塚植民地を襲ったスペイン風邪
ブラジルの新型コロナウイルスの感染拡大は、まったく終息の気配をみせない現状だ。だが、ブラジル日本移民史は開拓の歴史だが、ウイルスのような感染症との戦いの連続だった。戦前の南米は熱帯性感染症の巣窟と見られており、温帯で生まれ育った日本移民にとってはDNAにまったく耐性のない病原体とのむき出しの格闘だ。日本移民112周年というタイ ...
続きを読む »