ニッケイ新聞 2008年8月12日付け 〇一年一〇月に掲載した連載『出稼ぎ高齢者の見た日本』では、一世が切ない気持ちで思い描いていた「祖国」が、現実には異なる姿であることをデカセギで気付く、という心の軌跡を追った。 移民にとって〃故郷〃とは、親密な人々との大切な思い出の舞台であり、物理的空間以上の心理的意味を持つ場だ。そこを ...
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百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第15回 ブラジル日本会議が発足=国境越えて想いを共有
ニッケイ新聞 2008年8月9日付け NHKが発端で、こんな〃事件〃も起きた。 〇五年六月、中国全土で反日デモが連日行われ、小泉首相の靖国神社参拝に対する批判が相次いでいた。同年六月七日付けニッケイ新聞にでた「中国政府に抗議へ=日系人が集会予定=東洋人街で十一日」という小さな記事が異例の反響を呼んだ。 ことの発端は、NHK ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第14回 日系の祖国は「日本」?=回帰する高齢2世層
ニッケイ新聞 2008年8月8日付け 弊紙ポ語版「ジョルナル・ニッパキ」はもちろん、日系人向けポ語新聞ニッポ・ブラジル紙にもNHK番組表が掲載されており、NHKの都合で突然、時間割が変更されるとポ語で苦情がくる時代だ。 視聴者であるバイリンガル二世の多くは戦前からの流れで、心のどこかに「日本精神」のカケラを抱えている現在七十 ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第13回 NHK視聴者は2世中心=新「共同体」の創造へ
ニッケイ新聞 2008年8月7日付け NHKによれば、海外在留邦人を対象とした「NHKワールド・プレミアム」は今年四月時点で、ブラジル内において三十八万世帯もの視聴者がいるという。 厳密にいえば、NHKを含む番組パッケージを契約している世帯数と考えられ、そのうちの何割が実際にNHKを視聴しているかは分からないようだ。もし、三 ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第12回 エスニックメディアNHK=通信の発達が創り出す「郷愁」
ニッケイ新聞 2008年8月5日付け 前節で触れたように、移民船から旅客機に移住手段が変わったことは、単に移動時間が短くなっただけでなく、移民心理にも影響を与えている。 その交通手段の発達の先には八〇年代に始まったデカセギ現象があった。これに加え、グローバリゼーションの別の側面である通信の発達により、九〇年代末からNHKがブ ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第11回 移民船という通過儀礼=NHKテレビ放送の衝撃
ニッケイ新聞 2008年8月2日付け 「サントスでヨーイドン!」という言葉は、移民独自の心情のひだを良く表現している。 第一回移民船笠戸丸以来、かつて日本移民はブラジルまで船で四十日、五十日かけて渡るという一種の通過儀礼を体験することにより、地球の反対側にある「新天地」に到着したと実感した。 赤道通過時に行われる「赤道祭」 ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第10回 エスニック「日系民族」=継承と統合の均衡へ
ニッケイ新聞 2008年8月1日付け 移民のエスニック研究をするサンパウロ大学の森幸一教授は「ブラジル移民のナショナリズムは、日本のそれとはまったく違う。あくまでもブラジル国内の、エスニック(民族)としてのナショナリズムの問題だ」との立場を強調する。 国籍を超えた「日本民族」という存在は、「日系民族」といった方が適当かもしれ ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第9回 七生報国説く2世軍人=純粋な日本民族解釈
ニッケイ新聞 2008年7月31日付け 戦前、日本政府は在外公館や「東京ラジオ」などを通して、自国領土の外に「日本国民」を作ろうとした。この「遠隔地へのナショナリズム政策」の強い影響を受け、さらに同胞社会は多国籍な就労環境という刺激の中で、独自色の強いナショナリズム傾向を育んでいった。 異民族に囲まれて生活する日本移民にとっ ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第8回 勝ち組民衆の声はいずこ=日本とは異なる戦争経験
ニッケイ新聞 2008年7月30日付け あえて「自分のオヤジは臣道連盟だった」と公言するのは、中野文雄さん(86、福岡県出身)=サンパウロ市在住=だ。「そのおかげでオヤジはある時期、自宅にいるよりカデイア(刑務所)にいる方が長いくらいだった」と振り返る。 「あんなに大騒ぎになったのは、日本人が日本人を侮辱した挑発的な行動をと ...
続きを読む »百年の知恵=移民と「日本精神」=遠隔地ナショナリズム=第7回作られるコロニア正史=「勝ち組=テロ」は本当か
ニッケイ新聞 2008年7月29日付け 前節までは、極限心理に置かれた同胞社会が集団幻想として想起した日本民族という「想像の政治共同体」が、どのような条件と過程によって、現実を越えるほどの存在感を生んできたか、を見てきた。 このような勝ち負けの歴史は戦後、文協初代会長になった山本喜誉司氏をリーダーとする認識派によって「正史」 ...
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