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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】

 アマゾンで豊饒なのは生態系だけではない。過酷な大自然を縦糸に、極彩色の絵巻のような逸話の数々が横糸として織り込まれ、とても豊かな移民史の大河を形成している。並みいる欧米系植民地がアマゾンの厳しい自然に手を焼き撤退していく中、マラリアなどの病害に耐えて日本移民が根付いてきた八十年の歴史は、一朝一夕には語れない。錚々たる大物政治家が関わる中、アマゾン移住は進められてきた。計りきれないほどの血と汗と涙を苗床に、今では森林農業という世界から注目される新しい〃文化〃も芽吹いている。だが、そこに至る道程は楽なものではなかった。ベレン、サンタイザベル、グアマ、トメアスーなどの東部アマゾンを取材し、そんな移民史の一部を掘り起こした。(深沢正雪記者)

アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《17》=第2移住地の建設へ=戦後最大の壮大な構想

ニッケイ新聞 2009年9月17日付け  アマゾン入植三十周年は胡椒景気の真っ直中であり、それにふさわしく盛大に祝われた。日本の代議士たちも戦後、東京にアマゾン会を発足させ、上塚司が会長になって懸命に移住地を応援し、盛り上げた。  五九年十一月、千葉三郎代議士を団長とする慶祝使節団が来伯して行われた開拓三十周年記念祭では、祭典準 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《16》=世界の7%を生産=胡椒景気でアカラから独立

ニッケイ新聞 2009年9月16日付け  「胡椒景気で納税額が膨大な金額になったため、五九年九月からアカラ郡から独立し、パラー州六十番目のトメアスー郡となった。当時の州納税入郡としては、ベレン市、サンタレン市、カスタニャール市に次いでの納税多額郡として州経済に大きく寄与したのである」(『トメアスー七〇年史』同三十九頁)。  独立 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《15》=ピメンタ黄金時代へ=故郷に札束で錦飾る

ニッケイ新聞 2009年9月15日付け  「いわゆる黒ダイヤですよ」。第二回移民、トメアスーの沢田哲さんは、ひと言で当時の雰囲気をそう言い表す。イバラの道も、移民自身の血のにじむ努力によって報われる運命にあった。  四七年十二月のトメアスー産業組合の総会では、それまで「雑収入」項目にあった胡椒が、米、野菜に次ぐ第三位に急浮上し、 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《14》=グアマ=改革院が旅券を没収?!=6年で残ったのは4割

ニッケイ新聞 2009年9月12日付け  「とにかく若かった。他県に行くような気持ちだった。失敗しても、やり直せばいいという安易な若さがあった」。大江牧夫さん(76、山形県)は麻布大学獣医学部を卒業した後、海外雄飛にロマンを感じて、五七年にグアマ移住地に第四次で入植した。  同地造成が予定通り進まなかった背景には、五八年のブラジ ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《13》=グアマ=シベリアよりはまし=「移民は日本人でない」

ニッケイ新聞 2009年9月11日付け  「みんなグアマは酷かったとかいうけど、シベリアに比べればたいしたことはない」。呵々と笑い飛ばすのは谷口範之さん(84、広島県出身)=サンパウロ市在住=だ。  終戦直前、シベリアで「わずか四日間の戦闘で連隊は半減した」という殲滅戦の後、貨物列車に詰め込まれて内モンゴルの極寒のラーゲリ(収容 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《12》=グアマ=〃緑の地獄〃で水責め=「ドミニカよりひどい」

ニッケイ新聞 2009年9月10日付け  「グァマへ、グァマへと心が急ぐグァマはいよいか、住みよいか」――「麦と兵隊」の替え歌が、移民船で景気よく歌われ、期待感を煽っていた。(『アマゾン六十年史』井上勝さんの一文)  胡椒景気が始まっていたトメアスーから百キロほど北上したグアマでは、五五年に移住地の建設が開始された。日本から百二 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《11》=マカコ事件であわや追放=サンパウロ市巻き込む強い影響力

ニッケイ新聞 2009年9月9日付け  終戦直後、勝ち負け紛争が起きて日本移民に対する評価が落ち、四六年八月にはあやうく日本人移住禁止が新憲法に盛り込まれる寸前までいった。その結果、移住再開は当面、北伯(辻移民)とマットグロッソ州(松原移民)に限定された。  そのような戦後移住再開に関し、当時の邦字紙の論調は基本的に冷淡だった。 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《10》=若者たちが〃中興の祖〃=毎週値段上がるピメンタ

ニッケイ新聞 2009年9月5日付け  植民者全員の希望を載せたウニベルサル号が、静かに波止場を出航した――。この瞬間、トメアスーにとっての戦争は終わった。  人事を尽くした結果、「普遍」の名を冠した〃箱船〃が次なる天命を運んできたのだ。  沢田哲さんは、こう説明する。「最初ね、波止場を出て川の曲がり角(一キロぐらい)までいって ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《9》=ズブの素人が造船?! =改革に燃える青年たち

ニッケイ新聞 2009年9月4日付け  終戦翌年の四六年三月、二十歳そこそこの若者たちが決起し、産組という身内に改革を求め、返す刀で州政府にも戦時体制を終わらせるべく果敢に交渉を挑み、体当たりで勝ち取っていった。  植民地の青壮年の有志十七人によって結成されたアカラ農民同志会(会長・関勝四郎、委員長・戸田子郎)だ。  「アカラ産 ...

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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベレン・トメアスー編】=《8》=「最低の運命の時期」=桟橋で玉音放送聞く

ニッケイ新聞 2009年9月3日付け  〃イバラの道〃は移民の宿命なのか。  第一回アマゾン移民の一人、ベレン近郊アナニンデウア郡在住の大橋敏男さん(92、静岡県)は、自分史『南十字星は誠の光を』の中で、ドイツ潜水艦事件の直後のことをこう記す。  「私が書いた手紙の中に、『ブラジルの国旗には秩序と進歩とありますが、今度の出来事は ...

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