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二世とニッポン語問題=―コロニアの良識にうったえる―=アンドウ・ゼンパチ

 52年前、1958年のブラジル日本移民50周年の折にアンドウ・ゼンパチさん(1900―1983、本名=安藤潔、広島)が発表した『二世とニッポン 語問題~コロニアの良識にうったえる』という小冊子は、いま読んでも「その通り」と納得する部分が多く、再読に値する文書だ。アンドウ氏は東京外語大ポ語 学科の一回生で、1924年の昭和天皇ご成婚記念事業「大毎移民団」の移民監督として渡伯し、戦前の日伯新聞編集長などを経て、戦後はサンパウロ人文研の 主任研究員として調査活動をし、1967年2月に帰国した。『ブラジル史』(岩波書店、1983年)などの著作もある知識人だ。もちろん、ここで問題にさ れている外国語教育令などの法令も現在とは状況が違う点もあるが、二世や日本語教育に関する考え方全般には高い先見性が感じられ、いまも学ぶべき点が多い ようだ。安藤家とサンパウロ人文科学研究所の許可のもとに掲載し、百周年後のコロニアの将来を考えるための資料としたい。なお、表記のみ一部現代式に変え たが、それ以外は原文のまま。(編集部)

二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第18回・終=ニッポンを伝えるために

ニッケイ新聞 2010年3月12日付け  ニッポン語の本や雑誌が自由に読めるような教育は、大部分の二世に望まれることではなく、ある限られた、いい条件のもとに、あるものにできることで、コロニアの日語読本の目的は、完全な初等教育ということを目ざすべきである。  ところで、ニッポンの本がよめなくてはニッポン文化の理解ということは望めな ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第17回=書き、話す能力とポ語

ニッケイ新聞 2010年3月11日付け  ニッポンでも、教育漢字だけでは、ふつうの本や新聞雑誌はよめないので、これが完全によめるようになるには、中学校を終えなければいけないといわれている。  まして、わがコロニアでしかも、四年間の初等教育で、ニッポンの本や雑誌をよめるように教えることなど、とうていできることではない。それにもかか ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第16回=コロニアの日語読本編集

ニッケイ新聞 2010年3月10日付け  現在コロニアで使われている日語教科書は、もとの文部省で作ったいわゆる旧教科書と、戦後新しく出た各種の新教科書であるが、数年前までは旧教科書の方がずうっと多く使われていた。その理由は戦後の民主的に変革されたニッポンに対して、あきたらぬ不満な気もちをもった一世が、自分が過したかつてのよきニッ ...

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二世とニッポン語問題=―コロニアの良識にうったえる―=アンドウ・ゼンパチ=第15回=適正な日語教科書を

ニッケイ新聞 2010年3月9日付け  現行法令のように、半禁止的なやりかたでは、ただいたずらに、もぐり学校をつくらせることになるだけである。そしてかくれている学校に対しては、教育局の監督は行われないから、そこで、どんな方法で、どんなことが教えられているかも分らないことになり、同化を促進するために、規定した教育法令が、かえって逆 ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第14回=移民1世の苦悩

ニッケイ新聞 2010年3月5日付け  言語は民族文化を伝承するための根本的なもので、親が子どもに、自分の文化をつたえようとする本能をみたすために、かくべからざるものである。親と子の精神的なつながりは、じつに、両者の文化が相通じることによって認められるので、もし、子どものもつ文化が、親のそれとひどくはなれ、コトバも通じなければ、 ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第13回=コロニア日語教育の現状

ニッケイ新聞 2010年3月4日付け  われわれが、ニッポン語教育会議というものをつくったことに対して、コロニアの一部から、いろいろな批判をうけたが、それらは日語教育会議設立の趣旨が、じゅうぶんに理解されていないための誤解によるものであることをイカンに思っている。  そこで、ニッポン語教育会議の目的について、誤解されている点や理 ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第12回=外国語教育令の盲点

ニッケイ新聞 2010年3月3日付け  外国語教育令は、外国語学校へはいる年を14歳以上とし、外国人が先生になることを禁じておきながら、肝心の教科書ついて、きびしい規定がない。これは移民の子孫の同化促進を目的として定められた法令としては、大きな盲点である。  現在、コロニアで使われているニッポン語教科書は、すべてニッポンの小学校 ...

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二世とニッポン語問題=コロニアの良識にうったえる=アンドウ・ゼンパチ=第11回=ニッポン語教授とポ語習得

ニッケイ新聞 2010年3月2日付け  親が、その文化を子どもにつたえようとする気持は、人間の本能であるといっていい。これは、けっして禁止令などで、おさえられるような単純な気持ではない。コロニアの一部では、外国語教育令を守って、ニッポン語教授をやめているものもあるが、これとて、非常な不満を感じながらやむをえないという悲しいあきら ...

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二世とニッポン語問題=―コロニアの良識にうったえる―=アンドウ・ゼンパチ=第10回=理想的なブラジル同化

ニッケイ新聞 2010年2月26日付け  移民およびその子孫がブラジル文化によりよく同化するということについて、われわれは、反対どころか、むしろ、それを望ましいことであると考えているのである。しかし、移民の文化を圧迫するような同化の強制、または、親と子との文化的な関連をたちきるようなやり方は、決して賢明な同化政策ではない。  民 ...

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二世とニッポン語問題=―コロニアの良識にうったえる―=アンドウ・ゼンパチ=第9回=日本語と親子の文化的絆

ニッケイ新聞 2010年2月25日付け  この外国語教育制限は、移民およびその子孫のブラジルへの同化を、できるだけ促進させる目的で行われたものであるが、この法令が行われてから十九年来の結果を見ると、それは決して、いい意味での同化促進とはなっておらす、ただいたずらに、一世と二世との文化的関連をたちきることになり、精神的な理解によっ ...

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