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評論「内」と「外」の目――両サイドから見た『うつろ舟』の評価――伊那宏

謎の11人から真相聞く=なぜ日本を飛び出したか

第4回=母国の人間への反発心

ニッケイ新聞 2012年9月28日付け  この作品が書かれた当時(1988〜94年)は、日本経済は今の中国のように目覚しい好況期にあり、世界第2位の経済大国としてもてはやされて、国民の自意識もそれなりに高まっていた頃である。  南米大陸の後進国に甘んじていたブラジルの、奥地にやつてきた日本の若き撮影隊員を作中に登場させ、そういっ ...

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第3回=「日本人の面をした山猿め」

ニッケイ新聞 2012年9月27日付け  本篇で最も読者の心を惹きつけるのは、第2部3章「洪水」(本文131ページ)の中の(学術調査か風物を紹介するための撮影隊)が登場する場面である。少し長いが引用してみよう。  《日に日に、季節の深くなる、ある日のこと。この辺りでは見かけたことのない船艇が俺の漁場の岸に舳先を着けた。3人の男達 ...

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第2回=日本から〃再発見〃されて

ニッケイ新聞 2012年9月26日付け  折々の場面において「こう云うことはあり得ないよね」と言うような批評を下した人もいたが、多くの人〈我々仲間〉は、作品を自らの体験の一部と対比した上で、あり得ることかあり得ないことかを判断していた。つまり、現実的であるか非現実的であるかを問題にし、『うつろ舟』のもっと本質的なものへ目を向ける ...

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第1回=移民文学の〃渦〃から誕生

ニッケイ新聞 2012年9月25日付け  コロニア作家・松井太郎さん(94、神戸市)=サンパウロ市在住=の小説選集の二冊目『遠い声』(西成彦・細川周平編、松籟社)が7月20日に日本で刊行された。2010年に刊行された一冊目『うつろ舟』(同)は「移民文学の一つの到達点」「日本文学の臨界」「孤高の作家」などと評され、日本の全国紙や地 ...

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