ニッケイ新聞 2012年2月7日付け 盛岡駅を出ると、数珠つなぎのトンネルが待っていた。八戸駅まで、窓外にまとまった風景が展開されることもなくトンネルに次ぐトンネル。 常に最短コースをたどる新幹線は概して隧道の連続だが、時間にして30分弱のこの区間にはずいぶん多い。最後のトンネルを通り抜けると、そこはもう八戸市域だった。 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員
特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(14)=われわれは何者か
ニッケイ新聞 2012年2月4日付け 傍らにあった東北新幹線車内誌「トランヴェール」をめくってみると、岩手・平泉で藤原一族が栄える12世紀ごろに完成した北日本の幹線道路「奥大道」の記事が載っていた。 福島・白河関と青森・陸奥湾をつなぐ中世の東北縦断道路である。遺跡からは中国の磁器も出土しており、遠く京都からオホーツク海に至る ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(13)=日本人が小粒に
ニッケイ新聞 2012年2月3日付け さきほどから、東京駅で新幹線ホームの雑踏をみている。強い地鳴りのような音がし、話し声がかき消されるほどだ。 ひっきりなしに列車に乗ったり降りたり、あるいは乗車待ちの大勢の老若男女。石原慎太郎東京都知事が思わず口走ったであろう、我欲を募らせた挙句に天災という名の天罰が下った人々—。 『新 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(12)=神戸で1泊表敬
ニッケイ新聞 2012年2月2日付け 鹿児島中央駅から新青森駅までの2千キロ余りを1日で新幹線走行しようとすれば、できないことはない。 「望郷阿呆列車」で旅の友としたJR時刻表(2011年8月号)を引くと、この作業が実は楽しいのだが、鹿児島をさくら400号で午前6時7分に発てば、博多駅に午前7時51分に着く。 同駅で午前8 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(11)=超高速で北上す
ニッケイ新聞 2012年2月1日付け 今年は東京—大阪間で新幹線が開業してから47年になる。0系と呼ばれた初代新幹線の最高時速は210キロだった。半世紀近い進化の時を経て、現在のN700系は時速300キロ走行が可能となった。 わたしは旅の3日目に新大阪駅から小倉駅へ向かった際、時速300キロを体感する幸運に恵まれた。台風の影 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(10)=新幹線さくら号
ニッケイ新聞 2012年1月31日付け 2両編成の指宿たまて箱号は、先にもふれたように車体が白黒のコリンチャンスカラーで、見ていたら、乗客が下車すると車体の上部から白い煙を吐き出したのだ。 驚いて駅員に聞くと、玉手箱のけむりだという。薩摩隼人はそこまでやるわけだ。蝦夷の末裔たる佐竹衆など逆立ちしても浮かばない発想だろう。 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(9)=観光列車に乗る
ニッケイ新聞 2012年1月28日付け 午後まだ早い時間、熊本駅に到着した。宿泊は駅横手のホテル・ニューオータニ。なんの手違いか超スイートルームなのだ。 早速確かめると、通常宿泊料金の3分の1だった。支配人風は、口を濁してサービスだと言った。ここは肥後だから、仙波山のタヌキにのせられたか。 ところでこの仙波山だが、後日調べ ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(8)=憧れの九州入り
ニッケイ新聞 2012年1月27日付け 9月4日、午前6時半起床。中国路を一気に走破し、1泊とった小倉駅コンコースのステーションホテル・コクラ14階の部屋。広い窓からの眺望がなんとも贅沢な気分を誘う。 眼前の関門海峡に数隻の小船が行き交っている。その向こうに見えるのは彦島というそうで、名高い巌流島は彦島の後ろになり、ここから ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(7)=急遽、山陽道に変更
ニッケイ新聞 2012年1月25日付け 夜来の雨は小降りになったが、まだ止まない。 自殺の名所で知られる東尋坊にほど近い越前北部のこの地方は、暴風域には入っていないらしい。テレビは朝からしきりに台風関連の情報を流している。仲居さんの勧めもあって、やむを得ず米和旅館にもう1泊することに決めた。 することも無く、朝風呂に入る。 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(6)=温泉地で台風避け
ニッケイ新聞 2012年1月24日付け 墨汁を薄めて少し緑を溶かしたような色合いの日本海は、台風が近いというのに妙に凪いでいる。その海や浜辺も内陸部に連なる山間も、はじめて見る景色ながらどこか心温まり、しみじみと懐かしい。これがわが故国の風景なのだと思うと、見知らぬ土地にも望郷心は癒されるのである。 日本海沿いに信越本線を走 ...
続きを読む »