ニッケイ新聞 2012年2月1日付け 今年は東京—大阪間で新幹線が開業してから47年になる。0系と呼ばれた初代新幹線の最高時速は210キロだった。半世紀近い進化の時を経て、現在のN700系は時速300キロ走行が可能となった。 わたしは旅の3日目に新大阪駅から小倉駅へ向かった際、時速300キロを体感する幸運に恵まれた。台風の影 ...
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特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(10)=新幹線さくら号
ニッケイ新聞 2012年1月31日付け 2両編成の指宿たまて箱号は、先にもふれたように車体が白黒のコリンチャンスカラーで、見ていたら、乗客が下車すると車体の上部から白い煙を吐き出したのだ。 驚いて駅員に聞くと、玉手箱のけむりだという。薩摩隼人はそこまでやるわけだ。蝦夷の末裔たる佐竹衆など逆立ちしても浮かばない発想だろう。 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(9)=観光列車に乗る
ニッケイ新聞 2012年1月28日付け 午後まだ早い時間、熊本駅に到着した。宿泊は駅横手のホテル・ニューオータニ。なんの手違いか超スイートルームなのだ。 早速確かめると、通常宿泊料金の3分の1だった。支配人風は、口を濁してサービスだと言った。ここは肥後だから、仙波山のタヌキにのせられたか。 ところでこの仙波山だが、後日調べ ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(8)=憧れの九州入り
ニッケイ新聞 2012年1月27日付け 9月4日、午前6時半起床。中国路を一気に走破し、1泊とった小倉駅コンコースのステーションホテル・コクラ14階の部屋。広い窓からの眺望がなんとも贅沢な気分を誘う。 眼前の関門海峡に数隻の小船が行き交っている。その向こうに見えるのは彦島というそうで、名高い巌流島は彦島の後ろになり、ここから ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(7)=急遽、山陽道に変更
ニッケイ新聞 2012年1月25日付け 夜来の雨は小降りになったが、まだ止まない。 自殺の名所で知られる東尋坊にほど近い越前北部のこの地方は、暴風域には入っていないらしい。テレビは朝からしきりに台風関連の情報を流している。仲居さんの勧めもあって、やむを得ず米和旅館にもう1泊することに決めた。 することも無く、朝風呂に入る。 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(6)=温泉地で台風避け
ニッケイ新聞 2012年1月24日付け 墨汁を薄めて少し緑を溶かしたような色合いの日本海は、台風が近いというのに妙に凪いでいる。その海や浜辺も内陸部に連なる山間も、はじめて見る景色ながらどこか心温まり、しみじみと懐かしい。これがわが故国の風景なのだと思うと、見知らぬ土地にも望郷心は癒されるのである。 日本海沿いに信越本線を走 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(5)=乗継ぎ続け南下
ニッケイ新聞 2012年1月21日付け 午前9時10分、ガタンとひと揺れし、新潟駅行き特急いなほ8号が秋田駅を発車した。羽越本線をたどるこの列車も半室グリーンで、客はわたしとドイツ人らしき初老の夫婦1組だけ。夫がなにごとか言い、妻のほうはヤーヤーと頷いている。 ほどなくして妻が立ち上がり、グリーン車後部に歩き去った。わたしは ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(4)=出発進行いざ
ニッケイ新聞 2012年1月20日付け 9月2日午前6時起床。宿泊ホテルの朝食はまだ準備できていないが、これは計算済みだった。朝めし替わりに、大館の鶏めし弁当がお目当てなのだ。 全国3千種といわれる駅弁界にあって、鶏めし弁当も数多いなか、大館鶏めし弁当は『駅弁大全』(文藝春秋社刊)にも載る特選弁当である。地元産の名物、比内地 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(3)=鈍行もまた楽し
ニッケイ新聞 2012年1月19日付け 昨今、鈍行という俗語はあまり使われない。つまり普通列車であり、ついでにいえば急行のほうもほとんど消え、もっぱら「快速」が近距離区間をお得意先に走り回っている。 ただし花輪線は、鈍行という言葉の響きこそ似つかわしい。ディーゼルカー(気動車)で通常2両編成、たまには1両だけでコトコトと田舎 ...
続きを読む »特別寄稿=望郷阿呆列車=ニッケイ新聞OB会員 吉田尚則=(2)=故郷でまず助走
ニッケイ新聞 2012年1月18日付け 本邦初の旅客列車は1872年、周知のように東京・新橋—横浜・桜木町間の路線に登場する。陸(おか)蒸気と呼ばれた英国製蒸気機関車が客車10両を牽引し、文明開化の夜明けを力強く疾走した。 ♪汽笛一声新橋をはや我汽車は離れたり〜 以後、全国各地へたちまち延びる路線に伴って、鉄道唱歌のほうもど ...
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