ニッケイ新聞 2013年8月1日 写真=本の表紙 つぎに収容所から耕地に到着し、寝床つくりから始める農場のこまごました生活が語られますが、作者がブラジル人だと感じられるのは、女主人公のキミエが黒人女と友だちになることです。これは書き手が日本人一世なら絶対に出てこないシチュエーション。日本人が描く農園風景は、日本側に引き寄せられ ...
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ブラジル文学に登場する日系人像を探る 10=中里オスカル=ジャブチ受賞『NIHONJIN』=中田みちよ(3)=暴力的な父の下で成長する子
ニッケイ新聞 2013年8月2日 第2章は、やもめになった稲畑秀雄が新しい家族をつくります。キミエが生きていたころ、もらい風呂にきていた三木村さんの娘静江と再婚しました。早い話が、農作業の人手がほしいために結婚し、結婚させるわけです。農村部では結構、こんな感じで嫁入り話が進められましたね。実際には秀雄が入り婿のような形ですが、 ...
続きを読む »ブラジル文学に登場する日系人像を探る 10=中里オスカル=ジャブチ受賞『NIHONJIN』=中田みちよ=(4)=戦時下でも日本精神滋養
ニッケイ新聞 2013年8月3日 ここでは親に逆らう罰として「ヤイト」がすえられます。アハハ・・・お灸ねえ。お灸で思想的なものが変えられるなら、世の中、苦労しないんじゃないんですか。ハハハ。しかし、実際にはこうした罰を与えられた人が結構いるようです。鍼灸師からきいた話ですが、親から罰としてヤイトをすえられた痕跡が患者さんの身体 ...
続きを読む »ブラジル文学に登場する日系人像を探る 10=中里オスカル=ジャブチ受賞『NIHONJIN』=中田みちよ=(5)=移民家庭の幸せとは?
ニッケイ新聞 2013年8月6日 まあ、移民はみな多かれ少なかれ日常茶飯事的に、こんなイヤがらせを経験しています。たしなみがある人は思っていても口には出さない。左官階級や、ひどいときは乞食にまでののしられましたね。ナニ、超越すればいいわけで、そんなことで傷つく必要もない・・・それこそ、馬耳東風。作者は最大公約数的に日系社会で起 ...
続きを読む »ブラジル文学に登場する日系人像を探る 10=中里オスカル=ジャブチ受賞『NIHONJIN』=中田みちよ=(6)=「大和魂に反する行動」
ニッケイ新聞 2013年8月7日 【あなたはいい人で、模範的な夫であり、子どもたちもみなよい子だが、しかし、それだけでは幸せになれなかった。だから、愛する男の許に行く。 十年前に出立するはずだった人。ガイジンだったから父親が許さなかった人。部屋に戻りおいていく夫のそばに横たわった。この人は何だったのだろうか。彼女が結婚した人・ ...
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ニッケイ新聞 2013年8月8日 ハルオはトッコウタイの二人がいらだっていることがわかった。彼らにははなから会話する気などないのだった。 「大和魂に反する行動をした」と、もういちど手紙の中の一節をくり返した。 「もう一度頼む。弁護の権利を認めてくれ、裁判を求める。帰って君たちを派遣した人間にそう伝えてくれ」 「われわれは ...
続きを読む »ブラジル文学に登場する日系人像を探る 10=中里オスカル=ジャブチ受賞『NIHONJIN』=中田みちよ=(1)=どこかで疼く「日本人」の血
ニッケイ新聞 2013年7月31日 写真=著者の中里オスカル。ジャブチ賞授賞式にて とうとう最後の作品「にほんじん」の登場です。第54回ジャブチ賞(ブラジル書籍協会主催)の受賞作。賞設置から54年目にしてようやく日系三世中里オスカルが受賞したことに意義を感じています。選考委員同士の確執から新聞紙上をにぎわせたりしましたから、ご ...
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