気丈な女性として知られた妻マツは、夫安太郎を看取った後、子供たちと暮らすために一人で再びブラジルに戻り、93歳で亡くなるまでクイアバで過ごした。 マリリア在住者によれば松原耕地の初期のころ、コロノへの給与支払いが遅れたことがあった。パトロン宅に労働者が大挙して「松原を殺してやる」と息巻いて交渉に来た時、若かったマツが前に立ちふ ...
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大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(22)=戦後の1割は松原の恩恵に=グアタパラや南伯移民も
大谷晃を特許人とする松原移民枠を使って、サンパウロ州だけで1678人が入っており、実は麻州やバイーア州より多い。バイーア州は最初のウナこそ問題が起きたが、1959年以降だけで636人も続けて入った。つまり、松原本人は不遇のうちに祖国で亡くなったが、「移民枠」という大きな〃遺産〃を置いていった。 この表から分かることは、実は石川 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(21)=日本の国会でも松原議題に=大谷晃に引継がれた移民枠
実は、松原に関わる移民政策が日本の国会でも議題になった。病身の松原が和歌山に帰郷する直前、第22回国会の内閣委員会(1955年6月16日)の議事録によれば、次のようなやり取りがあった。 内閣委員会の田畑金光は、6月13日付朝日新聞にでた《松原安太郎氏が、結局移民の計画に失敗をして近く帰国をする》との記事を持ち出し、《こういうよ ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(20)=「生まれ故郷で死にたい」=失意のまま妻と療養に帰郷
松原が横浜正金銀行の大谷晃と知り合い、その凍結資金を一時的に移民事業に流用する計画を練ったが、ヴァルガスから拒否された―と志村が書いている件に関し、大宅壮一はこう書いた。 《戦時中に凍結されていた正金銀行の金八万コント(今は半分に下がっているが当時は八億円位になった)をブラジル政府から解除してもらって、移民会社を作ろうとする計 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(19)=ヴァルガス自殺を聞き脳溢血=悪評ばら撒かれ松原転落へ
1954年9月30日付パ紙では、松原の資金が反ヴァルガス派議員から《一部が人殺し謝礼金として使われていることは明らかな事実である》とまで書かれた。そこに、松原側からの反論のコメントはない。 後世からみると、これは少々行き過ぎだった可能性がある。松原は共犯者として逮捕拘留された様子はないからだ。結果的にただの〃疑い〃に過ぎなかっ ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(18)=ヴァルガス自殺で後ろ盾失う=松原の懐から政敵暗殺資金?
松原の日本移民再導入が許可された時、《これはコロニア内で態度不明だった新聞(編註=戦勝派新聞のこと)も朗報として大々的に報道した。戦勝論者の中から「移民導入不要論」の噴煙が揚がるかと思ったが、不思議な現象で、彼らは松原構想を大歓迎したのである》『志村啓夫文書2012』(岸本晟編集、278~287頁)という不思議な現象が起きた。 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(17)=松原追って訪日する宮坂国人=横浜正銀の凍結金を流用?
松原がヴァルガス大統領からの移民導入許可を携えて、1952年11月に日本に赴くという報道が流れた時、《コロニアの元老達は「松原は何者ぞ」と慌てふためいた。早速元老達の会合が召集された。急報に接して集まった顔触れは、海興の宮腰、東山の山本、ブラ拓の宮坂、コチアの下元等の諸氏だった》『志村啓夫文書2012』(岸本晟)、278~28 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(16)=ヴァルガスに200コントス=大統領選挙の運動費に大枚
『志村啓夫文書2012』(岸本晟編集、278~287頁)によれば、終戦直後の軍部クーデターで失脚し、意気消沈して南大河州で暮らしていたヴァルガスを、1950年末の大統領選挙に出馬するように促した一人がアルキメデスで、翻意させるための軍資金として松原耕地の金庫から持ち出した金を流用したようだ。 松原の金は、本人の意思とは関係なく ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(15)=志村啓夫文書が明かす逸話=アルキメデスの失踪の謎
この連載に関し、人文研の宮尾進元所長から「松原については、元コチア職員の志村啓夫(ひろお)さんが相当詳しいものを書いている」との指摘を受け、『志村啓夫文書2012』(岸本晟(あきら)編集)を調べてみた。すると総合農業雑誌『アグロナッセンテ』(92年3月、60号、30~39頁)に掲載された「第二次世界大戦後の日本移民導入の口を開 ...
続きを読む »大統領と日本移民の友情=松原家に伝わる安太郎伝=(14)=回収不能な移民への貸付け=ウナ脱耕で莫大な賠償金請求
ウナ植民地は、実はいわくつきの場所だと『曠野の星』は書いている。いわく《ウーナは今から三十五年前(編註=1929年)ドイツ移民が入って、河畔の近くに家を建て、原始林を開拓してカカオ、ゴムなどを植付けたが、雨時季になるやマレッタ(マラリア)が発生してバタバタと倒れ、遂に全滅の悲運を甞めた。この点、平野植民地やチエテ移住地に似てい ...
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